新卒の離職理由から考えて、人事が小さく始められる離職対策を紹介

「新卒の離職率を改善する必要があるけど、そもそも本当の離職理由がよく分からない」
「本当の理由を知ったところで、何から手をつけていいのいか分からない」

新卒の離職率が改善できず、そもそも離職理由も言語化できずに困っている人事担当者の方も、中にはいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、新卒の離職が企業にとって何が問題であるかを整理し、離職率と離職理由を整理した上で、人事担当者が小さく始めることができる離職対策を紹介します。

目次

【問題整理】なぜ、新卒の離職が問題になるのか?

まずは、新卒離職が起こるという事は、何が問題なのかを改めて整理していきます。ここでは、新卒離職から生じる問題を大きく3つ挙げて紹介します。

  1. 採用コストの問題
  2. 機会損失の問題
  3. 企業ブランドが低下する問題

では順に紹介します。

【採用コストの問題】中途採用よりも割安だけども、新卒も当然コストがかかる

新卒離職から生じる問題の1つ目として、採用コストの問題が挙げられます。新卒採用は中途採用と比較すると、相対的に割安なコストで済みますが、しかしながら当然採用コストも生じます。

例えば、新卒1人あたりの採用単価として、平均53.4万円ほどかかります。採用コストを53.4万円 × 採用人数と考えると、離職によるコスト面への問題は軽視できないでしょう。

加えて、例えば企業認知が低いので求人広告媒体への露出を増やしたり、媒体のプランのグレードを上げたり、合同説明会への参加を増やしたり、さらに採用動画などでコンテンツを充足しようと思えば、より採用コストも上がります。

また同時に教育コストの問題も関わってきます。新卒を戦力化するまでの期間は、新人研修・OJTといった教育期間として扱われ、当然ながらコストもかかります。もしこのタイミングで離職してしまうと、将来に向けた投資が無駄になってしまう可能性もあります。

ですので、新卒離職から生じる問題の1つ目として、採用コストや同時に教育コスト問題が挙げられるでしょう。

【機会損失の問題】離職人員分の採用と売上の損失

新卒の離職から生じる問題の2つ目として、機会損失の問題が挙げられます。新卒では、ある程度戦力化するまでに教育期間が必要でもあるので、即売り上げへ貢献する機会が減ったといったことにはなり辛いですが、とりわけ売上の機会損失は十分にあるでしょう。

ものすごく単純化した例を挙げると、新卒採用で営業職10人入社し、入社1年以内に5人離職したとします。また、この企業の新卒3年以内の社員の年間平均売上は1,000万円だとします。これを元に入社1年から3年以内の3年間の売上総額の差を試算すると以下のようになります。

  • 【もし離職率=  0%ならば】→在籍人数10人
    • 1,000万円(1人あたり売り上げ)×10人(在籍人数)×3年(年数)=30,000万円(売上総額)
  • 【もし離職率=50%ならば】→在籍人数5人
    • 1,000万円(1人あたり売り上げ)×  5人(在籍人数)×3年(年数)= 15,000万円(売上総額)


このような単純化した式で考えると、離職率を変数(他を定数)に設定した試算では、売上の機会損失の問題とも言えるでしょう。

ですので、雇い直しも含めて、離職した新卒の穴を埋める必要性も考えられ、機会損失の問題が挙げられるでしょう。

【企業ブランドが低下する問題】離職があまりに多いとブラック企業認定されることもあり、世間に良い印象をもたれづらい

新卒離職から生じる問題の3つ目として、企業ブランドが低下する問題が挙げられます。

「就活生・採用担当者に聞いた「就活ブラック企業」

株式会社ディスコによると、ブラック企業になると思う離職率の目安は上記のグラフの結果になります。

学生側で最も高い割合は、『離職率が3割超』と回答した就活生が全体の35.8%でした。

一方、企業側で最も高い割合は、『離職率が5割超』と回答した企業が全体の53.3%でした。

ブラック企業になる離職率の認識に、学生と企業との間で差が見られ、学生の方が離職率に対してシビアな見方がされている傾向が伺えます。

当然ながら就活生を含む世間に『ブラック企業』のイメージをされてしまうと、企業ブランドが低下する可能性が生じるでしょう。

以上のことから、新卒離職から生じる問題の3つ目として、企業ブランドが低下する問題が挙げられます。

新卒(大卒)の離職率は学歴毎で一番低い。しかし、一番改善が見えづらい。

厚生労働省の調査を引用し、学歴別卒業後3年以内離職率の推移を確認していきます。

  • 中学卒業における3年以内の離職率
  • 高校卒業における3年以内の離職率
  • 短大卒業における3年以内の離職率
  • 大学卒業における3年以内の離職率

以降、順に紹介します。

中学卒業における3年以内の離職率

学歴別就職後3年以内離職率の推移_「中学卒業」のみ抜粋

中学卒業における3年以内の離職率は、期間を平成元年から平成27年までとして、27年間の推移を確認すると以下のようになります。

  • 平成元年 → 65.7%
  • 平成27年 → 64.1%


以上のことから、中学卒業における3年以内の離職率は、27年間で、-1.6ポイントの変化が確認できました。

高校卒業における3年以内の離職率

高校卒業における3年以内の離職率は、期間を平成元年から平成27年までとして、27年間の推移を確認すると以下のようになります。

平成元年 → 47.2%
平成27年 → 39.3%


以上のことから、高校卒業における3年以内の離職率は、27年間で、-7.9ポイントの変化が確認できました。

短大卒業における3年以内の離職率

短大卒業における3年以内の離職率は、期間を平成元年から平成27年までとして、27年間の推移を確認すると以下のようになります。


平成元年 → 39.6%
平成27年 → 41.5%

以上のことから、短大卒業における3年以内の離職率は、27年間で、+1.9ポイントの変化が確認できました。

大学卒業における3年以内の離職率

大学卒業における3年以内の離職率は、期間を平成元年から平成27年までとして、27年間の推移を確認すると以下のようになります。

平成元年 → 27.6.%
平成27年 → 31.8%


以上のことから、大学卒業における3年以内の離職率は、27年間で、+4.2ポイントの変化が確認できました。

大学卒業が一番離職率低いけど、経年で見ると離職率の改善は見えづらい

学歴別卒業後3年以内離職率の推移を確認しました。その結果、大学卒業が一番離職率低い結界になりましたが、経年で見ると離職率の改善は見えづらい結果になりました。

学歴別卒業後3年以内離職率の変化量を検討

上記の表から、大卒の離職率は他の学歴よりも実は離職率単体で見ると、3割程度であり、最も低い結果となりました。

しかしその一方で、短大と大学卒は、平成元年から平成27年の推移を経年で見ると、定点2地点(平成元年と平成27年)の数字だけで判断すると、大学卒業に関しては+4.2ポイントの変化が見られ、離職率が上がっているという見方もできます(景気など、様々な影響があります)。

このことから、学歴別で確認すると経年で見る大学卒業への離職率は、最も改善がなされていないとも言えるでしょう。

これらのことを踏まえて、以降、大学卒業の新卒はどんな理由で離職しているのか紹介していきます。

離職するもっとも重要な離職理由は?

株式会社UZUZ 20代の第二新卒(就業経験が3年以内)を対象にした転職活動に関するアンケート調査

就業経験が3年以内の第二新卒の転職者を対象にした調査によれば、最も重要な退職理由のトップ3は以下のようになりました。

  • 1位: 仕事が自分に合わなかった12.8%
  • 3位: 社風が合わなかった 12.1%
  • 3位: ワークライフバランスが取れなかった 12.1%

新卒が離職する理由はわかった。その一方で、在籍したい条件は『良好な人間関係』

@人事 内定先企業の退職予定時期

入社予定の全国の大学生を対象にした調査によれば、3年以上在籍したいと思う企業の条件は、『良好な人間関係 49.3%』が最も高い結果になりました。

このことから、入社して良好な人間関係が感じられなければ、新卒社員は在籍したいと思わないことが考えられます。

実際、退職者の半数以上が退職する時に本当の理由を言わない

新卒の離職と社内での良好な人間関係は、退職時に本当の退職理由を言うか言わないかにも関係しているでしょう。

d’s JOURNALによれば、「退職した本当の理由を会社に伝えましたか?」という質問に対し、上司へは「伝えた」が47.0%、「伝えなかった」が53.0%。となりました。また、人事担当者へは「伝えた」が35.9%、「伝えなかった」が64.1%という結果になりました。

以上の調査から、退職者の半数以上が退職する時に、上司や人事担当者に本当の理由を言わないことがわかり、本音を言える関係性をそもそも気づけていない可能性があります。


しかしながら、同じ企業の社員(同僚、上司、人事担当者)と言えど、本音を話せる間柄になるのは、そもそも難しいかもしれません。

それでも、社員の不本意な離職を防ぐためにも、社員の困ったこと、悩んでいることなど、本音を含んだ『サイン』に気づける工夫は必要でしょう。

離職対策するためにも、『サイン』に気がつける仕組みを作り、悩みや問題を人事担当者として可能な限りケアしていきましょう。

人事担当者に必要なアクションは『離職前に、悩んでいるときに気付ける仕組み』を作ること

ここでは、新卒離職の理由である『人間関係』などを踏まえて、入社前・後で人事担当者が小さくできる対策を紹介します。

【入社前】採用の時に人事としてできること

入社前の採用時に人事担当者としての、『問い』と『できる』ことは、大きく2つあります。

  1. そもそも自社に合ってる学生を採用しているか?→採用したい人物像の設定を!
  2. その人物を適切に判断できてるか?選考基準の設定を!


では、順に紹介します。

そもそも自社に合ってる学生を採用しているか?→求める人物像の設定を!

採用したい人材がどのような要件を備えているか、いわゆる「求める人物像」「人材要件定義」を明確にしましょう。

理由は、採用時点で自社の雰囲気や社風などに合わない学生が入社してしまうと、ミスマッチが生じる可能性が非常に高くなり、結果的に早期離職に繋がるからです。

求める人物像を設定する際には、可能な限り要件の明確な設定が重要です。要件が『コミュニケーション能力が高い』でも、聞き上手なのか、伝え方がうまいのかに分かれます。

採用したい学生がどのような要件を備えているか、求める人物像を言語化してできるだけ明確にしましょう。

その人物を適切に判断できてるか?選考基準の設定をして共有を!

求める人物像の設定ができれば、要件なども含めて選考の基準として採用チームで共有しましょう。

理由は、求める人物像についてきちんと採用チームで共有がなされておらず、また『勘』に頼った選考では、せっかく要件定義したものの選考時点で俗人的で偏りが生じてしまい、正確な評価ができずにミスマッチを起こしてしまう可能性があり、結果的に入社後の離職率が上がるかもしれません。

ですので、適性検査など客観的な指標を用いつつも、求める人物像と選考する学生を適切に判断できるように、選考基準の設定を行って採用チームで共有しましょう。

【入社後】採用後に人事としてできること

入社後(採用後)に人事としてできることは限られていますが(現場に配属されると採用前と比べるとコミュニケーション機会などが減るため)、それでも離職を防ぐために小さくアクションできる事はあります。

  • 社員ストレスチェック
  • 入社○ヶ月面談
  • 意味付け次第で、さらに小さくアクションできるアイデア


以降、順に紹介します。

社員ストレスチェック

離職前に悩みに気付ける仕組作りの1つ目に、社員のストレスチェックがあります。

私の会社でもストレスチェックのために、wevoxというサービスを利用して、ストレスチェックを行なっています。

ストレスチェックを行うだけで離職が減る訳ではありませんが、間接的に社員1人1人のストレス状態を数値で把握し、個人、または部署やチームごとなどで差があれば、定性的な調査としてヒアリングなど行うなど、人事としても対策しやすくなります。

入社○ヶ月面談

離職前に悩みに気付ける仕組作りの2つ目に、入社○ヶ月面談があります。

入社○ヶ月面談は、入社して間もない新入(新卒)社員の悩みや不安と直接向き合うことができる手段です。

ストレスチェックのように一斉に広範囲に調査できなくても、定性的な調査として悩みを受け取る窓口ができます。また、場合にもよりますが、その場で直接悩みを解決できる手伝いをできるかもしれません。

例えば、私の会社では、入社後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月…など、人事責任者と面談する仕組みがあります。面談は「入社から1ヶ月経ちましたが。どんな今感じですか? 困ってることありますか?」など、ヒアリングベースで進められます。

定量的なチェックツールよりも、やはり人間が行っている分、『会社として働きやすい環境を考えたり、悩みや困ったことを理解する場』を提供している感はあります。

このように、離職を防ぐために小さくできる2つ目のアクションとして、入社○ヶ月面談があります。

意味付け次第で、さらに小さくアクションできるアイデア

離職を防ぐための小さなアイデアを紹介しましたが、施策とその意味付け次第で、比較的コストをかけず大きな施策や制度を変更しなくても離職対策ができるでしょう。

さらに小さく試すことができそうなアイデアは、例えば次のようなものがあります。

違う部署の気の合いそうな先輩社員メンター制度

違う部署×年齢が近い×気が合う社員がメンターになることで、仕事やプライベートに関わらず気軽の悩みを知れる窓口を作ることができる。

入社して配属部署でウェルカムランチ

歓迎会(仕事終わりの飲み会)よりも気軽に誘うことができるし、プライベートの時間に干渉せずとも、歓迎会ができて部署と関わるきっかけ作りができる。

仲良しパピコ

夏の暑い時など、パピコを配る。対になってるアイスを分け合うことで、コミュニケーションが起こるきっかけに。

1to1 ティーパックでお茶会

2個セットのティーパックを配布。『ほっと一息つきたい時、誰かを誘ってお茶してくださいね』など、1to1コミュニケーションのきっかけを作る。目的とは異なり、1人で飲まれないよう意味を伝える。

最後に

今回は、新卒の離職が企業にとって何が問題であるかを整理し、離職率と離職理由を紹介した上で、人事担当者が小さく始めることができる離職対策を紹介しました。

離職理由は様々な項目が調査では挙げられましたが、退職時に本当の離職理由を教えてくれる事は困難でした。

ですので、離職対策をするためには、まず社員が離職する前に、『何に悩んでいるのか、困っているのか』など、現状理解できる仕組みを作り、その上で小さくともアプローチしていくことが重要でした。

社員の『サイン』に気がつき、可能な限り向き合えるような仕組み作りを、今できることから始めてみませんか?

横山 大将

株式会社i-plug 法人マーケティング部 『人事ZINE』の運営を担当。 フリーランスとしてオウンドメディアの企画運営、webサイト制作のUX設計など約3年間携わり、現在に至る。人事の方々のお役に立てるメディアを作っていきます。