中小企業が「無理せずに」新卒採用を成功させる方法

中小企業では、大手企業のような採用予算やマンパワー、学生からの認知度・人気などがなく、新卒採用に苦戦することがあります。

こうした課題の解決のために、コンサルティングやツール制作などの高額なサービスを利用することもできますが、大手ナビ媒体サイトに掲載するだけでも100万円ほどかかってしまう新卒採用…「コストセンター」とも言われることのある人事部門が、これ以上の予算は取れない!とお悩みの担当者様もいらっしゃるかと思います。

ここでは、大手企業のような潤沢な採用予算がなくても実践可能な、中小企業の新卒採用のコツを紹介します。

なぜ中小企業にとって新卒採用は難しいのか

新卒採用は、少子化・売り手市場やスケジュールの早期化・長期化などが続き、大手企業にとっても難しさを感じるものになっていると言われます。

インターネットで気軽に求人にエントリーできる今、大手企業には「社名を知っているから」「安定していそうだから」といった理由の応募も多く、本当に求めている人材と応募者の間にギャップを感じていることもあります。

では一方で、中小企業から見た新卒採用の難しさの原因はどこにあるのでしょうか?

新卒採用の状況、大手企業と中小企業ではここが違う

新卒採用で中小企業が大手企業より不利になる点には、次のようなものがあります。

大企業 中小企業
学生認知度・人気

得やすい
学生が社名で検索する。待遇や安定感からも、待っていても応募が集まる。

得づらい
同業種の大手企業・中小企業とバッティングして応募が集まりにくい。

採用予算

多い
資金力があり、採用人数も多くスケールメリットが得やすい。

少ない
ナビ媒体サイトの掲載料や人材紹介の成功報酬に予算の大半が割かれる。

入社後の待遇・制度

充実している
年収額や福利厚生、研修制度などで学生に魅力づけできる。

大手企業には劣る
大手企業と比較されると負けてしまう。

マンパワー(人員)

十分にある
人事部門の人数が多く、採用専任の担当者が複数いる。

不十分なことが多い
採用担当が労務や総務などを兼任して担当している。

採用ノウハウ

蓄積しやすい
毎年の大規模な採用活動でPDCAを回しやすい。採用コンサルタントなどを利用しての知見獲得も。

蓄積しづらい
限られた予算や人員で新規ツール導入や効果の振り返りができない。

ちょっと「無理」をすれば可能な打ち手(施策)

こうした中小企業の新卒採用における課題に対し、人材会社など各社から採用支援サービスが提供されています。ただし利用には費用や工数がかかるため、追加で予算を取ったり、採用担当者の業務が増えたりといった負担もかかります。つまり、「ちょっと無理をすれば可能な打ち手(施策)」とも言えます

例:ちょっと無理をすれば可能な打ち手(施策)

採用コンサルティング

ナビ媒体サイトの運用や選考方法、内定者フォローまでコンサルティングしてくれるサービス。あくまで実務は企業側で行うことが多い。

採用代行

採用に関する実務を代行してくれるサービス。代行業者にはスタッフの人件費がかかるため、料金は高額になりやすい。

中小企業特化型ナビ媒体サイト

大手ナビ媒体サイトよりは安価に掲載できるが、総合的な集客力(登録学生数やページ閲覧数など)で劣る。

採用ホームページ

情報発信・応募受付だけでなく、採用への本気度も示すことができる。ホームページ制作費や取材費、そのチェック工数がかかる。

求人検索エンジン

Indeedが代表的。求人検索エンジンに広告を掲載し、求職者のクリックごとに課金されるサービス。上位表示やクリック単価などをコントロールする代理店の支援が必須と言って過言ではない。

SNSの活用

LINE、Twitter、Instagramなど学生が利用するSNSで情報発信する。安価に使用できるが、情報量が多いため埋もれてしまわない工夫や投資、日々の更新が必要。

インターンシップ

広報解禁前に学生と接触することができる。プログラムや会場、対応する人員を用意するなど負担が大きく、競争激化により「参加者が集まらない」問題も。

一方で、こうした施策の大半は、大手企業でもすでに打た行われています。つまり、各施策においても大手企業とバッティングしてしまい、認知度や資金力で再び苦戦することが考えられるのです。無理をして実践してみても、思ったほど効果が上がらない…という可能性もあります。

中小企業が採用難を突破するためのヒント

では、中小企業が大手企業に負けずに新卒採用を成功させるには、どのようなポイントを抑えれば良いのでしょうか?学生を対象にしたアンケート調査の結果から考えていきます。

新卒採用で学生は「中小企業」をどう見ているか

「2020年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、『あなたは「大手企業志向」ですか、それとも「中堅・中小企業志向」ですか』という設問に対し、

  • 大手企業志向 52.7%

    (「絶対に大手企業がよい」8.9%+「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」43.8%の合計)

  • 中堅・中小企業志向 43.4%

     (「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」36.1%+「中堅・中小企業がよい」7.3%の合計)

という回答結果が出ています。

近年は大手志向が高まっているとは言われるものの、2013年頃の不透明な経済情勢により大幅に低下していたものが以前の水準に戻っただけとも言えます。「どんどん大手志向の学生ばかりが増えている」わけではないのです。

学生の本音と「大手志向」の間にある矛盾

また、学生の企業選びの基準についての調査では、次のような結果が出ています。

学生の企業選びの基準(複数回答)


(株式会社i-plug 「2020年卒学生の企業選びの基準-11月の就活状況調査」 より)

トップは「事業内容」66.9%、「社風」60.9%と続きますが、大手企業にあって中小企業にない「知名度」は21.8%、「企業規模」は最下位の20.7%と、企業選びにあまり影響しないことを表しています。

どのような企業に魅力を感じるか(複数回答)


(株式会社i-plug「【2020年卒版】就活生の「働き方」に関する意識調査アンケート」より)

「社内の雰囲気が良い」80.5%がトップで、「成⻑できる環境がある」59.5%・「やりがいがある」59.3%など、「働きがい」に関する項目が3位・4位にランクインしています。

就職先を確定する際に決め手になった項目(複数回答)


(就職みらい研究所「就職プロセス調査(2019年卒)」より)
※またこの調査でも、企業の知名度や規模は下位にランクインしています。

「自らの成長が期待できる」47.1%が断トツの1位ですが、2位の「福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している」37.8%と、3位「希望する地域で働ける」37.0%は接戦です。全国転勤がある大手企業の総合職よりは、地元や固定の地域で働くことができる中小企業を選ぶなど、ワークライフバランスを重視する傾向が強くなっていると見られます。

これらの調査結果からは、学生が企業を選ぶときの本音として

  • 学生は給料や福利厚生など、生活に直接影響する「金銭面」の条件も重視している
  • 一方で、「やりがい」や「成長」を感じられる仕事や、「社内の雰囲気」の良さ、また希望の「勤務地」で働けることなどは、同等かそれ以上に重視している

ということが分かります。

安定した経営環境や、大勢の同期と年次ごとに受ける手厚い研修、全国転勤しながら年功序列の中でゆっくりキャリアアップしていく…という働き方が大手企業の典型パターンだとすれば、学生のこうした本音と「大手志向」の間には、いくらか矛盾があると言えるでしょう。

「大手志向」に深い理由はない

学生への調査結果から、企業選びの基準や入社の決め手には、企業の「知名度」や「規模」はあまり影響していないことがわかります。

しかし、大手企業の採用ホームページはリッチで、説明会やパンフレット、ノベルティなども豪華でとても華やかです。こうしたアピールを受ければ、志望度が上がる学生も一定数いるでしょう。深い理由はなくとも、大手企業の選考は「とりあえず受けておきたい」と思わせる仕組みが随所にあるのです。

とはいえ、大手企業の選考は「狭き門」でもあります。実際のところ学生は、安心感などを求めて一定程度には大手企業を志望するものの、並行して中小企業の選考も受けながら、仕事内容や社風や給与、勤務地、働き方などによって企業を比較・検討していくのです。

学生が知名度や規模で企業を選んでいない以上、もう「大手企業か中小企業か」という二元論で質問をすること自体がナンセンスなのかもしれません。

「無理なく」実践できる!中小企業が新卒採用を成功させるための施策

限られた採用コストやマンパワーのままでも「無理なく」実践できそうな新卒採用の施策を、学生の企業選びのポイントを抑えながらご紹介していきます。

募集〜応募まで

求人広告などを出して募集するところから、応募を受け付けるところまででは、企業の認知度やホームページの充実度、説明会の開催頻度や立地条件などが影響します。

時間や場所に囚われない「WEB説明会」や「WEB面接」

中小企業の場合、若干名〜十数名程度の採用人数に対して、合同説明会への出展や大規模な個別説明会を何度も実施すると、採用単価(一人当たりの採用コスト)がかさんでしまいます。

これを「WEB説明会」や「動画説明会」にすることで、少人数の参加でも繰り返し開催できたり、遠方に出張せずとも各地の学生に企業説明ができます。

また面接を実施するにも、遠方の学生に交通費なしで面接に来てもらうのはハードルが高くなりますが、「WEB面接」「動画面接」によって解決できます。1次選考や2次選考はWEBで行い、最終選考だけは本社まで直接来てもらうということでも良いでしょう。

時間や場所に囚われない採用活動は、移動のコストや直前キャンセルのリスク、人事の方の業務負担などを軽減する意味でもメリットがある上、学生にとっても都合が良く、ブランディングにもなります。

ワークライフバランスや働き方改革に注目する学生も非常に多く、WEB会議などに対応できることは柔軟な働き方を実現していることのアピールとなります。なお、WEB面接は専用のツールでなくともSkypeなどを使って面接する企業もあり、他にも安価なツールが多くあります。

採用ターゲット像を明確にする「人材要件定義」

採用したい人材がどのような要件を備えているか、いわゆる「求める人物像」「人材要件定義」を明確にするのもおすすめです。

優秀層と言われる高学歴者や体育会系、理系学部卒者など、どの企業も欲しがるような人材をターゲットにすると、多くの大手企業や中小企業と一緒に少ないパイを奪い合うことになります。

しかし、実際に「活躍している人材」は、例え同じ業種であっても企業によってさまざまです。自社にとって本当に必要な、活躍する人材の要件は何か、明確にしてターゲットを絞ることで「土俵ずらし」ができると良いでしょう。

学生にとっても、「あなたが上位ランク大学の学生だから採用したい」と言われるのではなく、「うちの会社ではあなたのこういう部分が活かせそうだから採用したい」と言われたほうが、「活躍イメージ」が持てて志望度が上がるはずです。

採用だけでなく多方面にメリット、「企業ホームページ」の改修

新卒採用を実施していて、大手ナビ媒体サイトにも掲載しているにも関わらず、企業ホームページが長らく改修されていない中小企業がしばしば見受けられます。

学生は、ナビ媒体サイトで興味を持った企業について、インターネットで検索をして企業ホームページもチェックします。このとき、いかにも古く、スマホから閲覧しやすいデザイン(レスポンシブ)になっていなかったり、また会社の最新情報が更新されていない場合には、学生は企業研究を諦めてしまう可能性が高くなります。

これは、顧客など社外のどのステークホルダーにとっても同じです。企業ホームページを改修し、内容やデザインを最新に保つことは、企業ブランドを保つ意味でも、採用力を強化する意味でもメリットが大きいため、ぜひ実施されることをお勧めします。

選考中〜入社まで

選考中から入社までは、自社に興味を持って応募してくれた学生にどれだけ魅力を伝えられるかが重要です。また、伝えるだけでなく企業側からも学生を深く理解し、学生に「活躍できるイメージ」を持ってもらえるようなコミュニケーションが大切になります。

ツールやサービスの費用がかかることはあまりないと思いますが、コミュニケーションのために多少の時間を割く必要はあるでしょう。

社員の魅力や社風が伝わる「座談会」や「個別面談」

社風を重視する学生が多い一方で、ナビ媒体サイトや企業ホームページなどからだけでは、実際に働く人の人柄や雰囲気はなかなか伝わりにくいものです。そこで、社員と学生が実際に顔を合わせて話せる場を設けることをおすすめします。

複数の社員を呼んで座談会や懇親会などの形式にすれば、社員同士が話している雰囲気から、社風が伝わります。また、社員と学生が1対1の個別面談では、他の就活生や人事の前では聞きづらい質問も聞けるなどのメリットがあり、学生の懸念点や不安を払拭することができます。年齢の近い若手社員と話せば、入社後のイメージも持ちやすくなるでしょう。

選考結果(合格理由)の「フィードバック」

選考結果(なぜ合格したか)を1次選考から毎度フィードバックしていくことで、学生に自分の活躍イメージ(この企業では自分のここを評価してくれる、入社後もここを活かして働ける)を持ってもらうことができます。

また、「選考結果をフィードバックしてくれる企業」には応募が集まりやすくなるという効果も期待できます。

長期的なプランを一緒に考える「キャリア相談」

学生は社会人経験がなく、長期的なキャリアプランを上手に描けないことも多いものです。結婚などのライフイベントに直面する時期でもあるため、入社後10年程度のキャリアプラン(配置や異動、昇進など)に不安を抱える学生も多くいます。

実際に就活生(特に女性)と話していると、結婚や出産とキャリアを両立するための企業選びに悩んでいる声が多く聞かれ、そういった相談ができる社会人が周囲に少ないことが伺えます。こうした個人的な不安を親身になって払拭してあげられれば、学生の入社意欲を高めることができるはずです。

また、就活生に限らず最近は自身のキャリアをコントロールしたいと考える人が増えており、「この会社に入社したら、3年後、5年後はどうなっているのか」をイメージさせられる企業のほうが選ばれやすくなっていると言えます。

入社後の長期的な働き方に不安がないかなどのヒアリングを実施し、学生1人1人に寄り添ったキャリアプランを提案できると良いでしょう。

そもそも中小企業に「大企業と同じこと」はできない

リクナビ・マイナビなどの大手ナビ媒体サイトが登場してから、企業の新卒採用は「求人広告を掲載して、あとは応募を待つもの」に変わりました。

しかし、少子化もあって採用売り手市場が続いている今、掲載して待っているだけでは採用できない企業が出てきています。ナビに掲載される求人広告数が多すぎて、業種やエリア、従業員規模などの希望する条件で検索しても、見きれないほどたくさんの検索結果が表示されてしまうのです。

そのような状況下でも応募してもらえる企業は、

  • 社名やグループ名で直接検索される、大手企業・有名企業・その関連会社
  • 従業員規模で絞り込んだときに総数が少ない、1万人超などの大手企業
  • 高額な掲載料を支払い、充実したページ構成や上位表示ができる資金力のある企業

など、中小企業よりも大手企業に偏ってしまうのが必然です。

環境にこれだけ差がある状態で、中小企業が「大手企業と同じこと」をして(=同じ土俵で)戦うのは得策ではありません。ナビに載せて応募を待ったり、エントリーシートで足切りをしたりと、大手企業向けに設計された採用活動を真似ても、効果が得にくいのは自然なことと言えるでしょう。

戦う「土俵」をずらして、求める人材を効率的に獲得しましょう。

中小企業には、学生が企業選びの基準として上位に上げる魅力(社風の良さ、仕事のやりがいや成長できる環境、勤務地固定などの働きやすさ)が十分にあるはずです。

大手企業と同じ採用手法で、大手企業と同じポイントで競おうとせず、また大手企業が求める人材と同じ層ばかりをターゲットとせずに、上手に戦う「土俵をずらす」ことで採用活動を工夫していただければと思います。

上に挙げた施策をまずは一つだけでも、スモールスタートで良いので、実践してみてはいかがでしょうか?

米田 彩香

新卒で入社した前職の老舗中小企業にて人事・採用を5年間担当。紋切り型の就活スタイルに疑問を持ち、OfferBoxの理念に共感したため2019年3月に株式会社i-plug入社、インサイドセールスチームに所属。夢は子供が独立したあとに学生街で食堂を開くこと。