令和の新卒採用いろは 〜初めて新卒採用を行う企業の方へ〜

初めて、またはものすごく久しぶりに新卒採用を行うという企業の採用担当者の方で、「何をどうやって始めればよいのか」とお悩みの方もいらっしゃると思います。

毎年激しく変化する新卒採用市場に対して、今年はどんな施策や手法を取ればよいのか。また、新卒者を受け入れてこなかった組織の制度(ハード)や風土(ソフト)で必要なものは何か。そもそも新卒採用を実施するとは、どういうことなのか。

初めての新卒採用で選ぶべき採用手法だけでなく、会社全体で準備しなければならないことや注意事項について解説します。

まずは新卒採用の市場動向を把握しましょう

新卒採用の市場動向は、さまざまな原因によって早いスピードで変化し、昨年と同じことをしてもその効果が予測しづらいことが特徴です。初めて新卒採用を行う場合は、必ず「採用手法のトレンドは何か」「活動スケジュールはどう変化するか」など市場動向を抑えておきましょう。具体的には

  • 新卒採用サービス提供会社(異なるタイプの複数社)に提案に来てもらう

例:大手ナビ媒体サイト・スカウト型サイト・人材紹介サービスなどの運営会社または販売代理店、採用コンサルティング会社 など

  • 新卒採用担当者向けセミナーに参加する
  • インターネットで情報収集する

といった方法があります。

新卒採用サービス提供会社は、当然ながら自社のサービスを売るために効果的な市場情報を積極的に伝え、不利な情報については教えない可能性があるため、さまざまな立場からの意見を集約して客観的に判断するためにも、サービス内容の異なる複数の会社から提案を聞くことを強くお勧めします。

提案を聞く際には、「新卒採用を初めて行うので、市場動向や手法について教えてほしい」と伝えると、営業担当者も丁寧な説明資料などを用意してくれるでしょう。

また、採用担当者向けセミナーの主催者も採用サービスを提供する会社であることが多いため、こちらも異なるタイプの複数社のセミナーに参加することで、情報の偏りを防げます。

インターネットでも、「新卒採用 市場動向」「新卒採用 調査レポート」などと検索すれば、大手人材会社や厚生労働省の調査結果などが無料で閲覧できます。市場調査レポートの読み解き方・活用方法については、以下の関連記事もぜひご参照ください。

参考記事:「新卒採用の市場動向を採用戦略に活かす方法」人事ZINE

平成から令和へ、変わる「就活」のスタイル

新卒採用のスケジュールは、経団連や政府が採用広報解禁時期を指定する「就活ルール」によって大きく左右され、毎年「今年はどうなるのか」と騒がれ、2〜3年単位で変化してきました。

しかし、最近ではスケジュールのみならず、学生の価値観や効果的な手法についても、多様化や順位の入れ替わりが起きてきています。「令和」の新卒採用・就職活動の変化について解説します。

驕れる人も久しからず…新卒ナビ媒体サイトが迎える「潮時」

わかりやすく大きな変化として、大手ナビ媒体サイト「リクナビ」「マイナビ」の利用率が約20ポイント減と大幅にダウンしています。なお、この調査は2019年3月下旬、ナビが3月にオープンしてからわずか1ヶ月で、利用率もピークと思われる時期のものです。

昨年の調査との比較で見ると、「マイナビ」は文系:90%(2019年卒)→73%(2020年卒)、理系:86%(同)→69%(同)、「リクナビ」も文系:90%(同)→71%(同)、理系:87%(同)→69%(同)と、いずれも大きくポイントを落としている。どちらかのサイトだけというわけではなく、ほぼ同様の傾向となっている。9割以上の学生が会員登録はしているものの、3月下旬時点で「活用している」かというと、2強をもってしてもそこまでではないということになる。

HR総研「2020年卒学生 就職活動動向調査(3月調査)」結果報告より

また、2019年8月には「リクナビ」運営の株式会社リクルートキャリアが「内定辞退率」の予測を販売していた問題がニュースになったこともあり、「リクナビ」はさらなる利用率低下の可能性も予想されています(HR総研×就活会議「2021年卒学生の就職意識調査結果報告」より)。

2013年卒の私が就職活動をしていた頃は「一人あたりの平均エントリー社数」は50社以上と言われていましたが、その数も年々、減少の一途を辿っています。学生には、たくさんの企業にエントリーする意向・必要がなくなっているのです。

一人あたりのエントリー社数の平均は28.5社。前年同期調査(30.0社)を下回りました

キャリタスリサーチ「6月1日時点の20卒就職活動調査」より

ナビ媒体サイトは、「就職氷河期」真っ只中の1996年にリクルートグループがサービス開始。インターネットの普及とともに大きく成長し、求職者には「誰でも平等に、どの企業にでも応募できるサービス」を、企業には「膨大な会員数のいるサイトに自社の求人広告を出すサービス」を提供してきました。

それが今、少子化や景気回復による採用売り手市場と、学生世代の価値観の変化などの影響を受けて、潮目が変わってきていると言えます。

学生と企業の双方にとって、

  • ナビでは掲載企業数が多すぎて、求人に目を通しきれない(学生)
  • ナビに載せただけでは学生に見てもらえない(企業)

といった「量」の問題の他に、

  • ナビでは各企業の個性や実態までは分からない(学生)
  • ナビから応募してくる学生の属性が偏る(企業)

という「質」の問題も、大手ナビ媒体サイトは抱えているのです。

若者の価値観は「マス(みんな)」から「個(わたし)」へ

ミレニアル世代、あるいはさらにその次の世代とも言われる「Z世代」である現在の就活生は、価値観や消費行動にも変化が見られます。「Z世代」とはアメリカで生まれた言葉ですが、世界的に見ても「Z世代」は個人を重んじ、多様性を許容する価値観だと言われます。

Z世代に浸透している(3人に2人以上が共感する)消費行動:

  • 多様性には寛容であるべきだ
  • 自分が気に入ればブランドは気にしない
  • あわせるのではなく、あう人といる 

学習院大学 特別客員教授 斉藤徹「Z世代の特徴的な価値観や行動」に関するアンケート調査より)

伴って、マーケティングなどにおけるコミュニケーションも、対「マス(みんな)」ではなく、対「個(わたし)」であるほうが響きやすく、購入などに繋がりやすいとされてきています。採用活動もマーケティングと同様、求職者(学生)に「選んでもらう」ための活動ですので、こうした消費行動の変化は無視できません。

またここ数年で、ナビ媒体サイト・口コミサイトに次いで利用される就活サイトが「OfferBox」などのダイレクトリクルーティングサービスになっています(HR総研「2020年卒学生 就職活動動向調査(3月調査)」結果報告)。

ダイレクトリクルーティングでは、ある特定の個人(や集団)に対して、スカウトメールを送ります。企業は応募を待つのではなく、学生に直接「あなたの〇〇の経験や資質が、当社の仕事で活かせますよ!」と「個」に対してのメッセージを伝えることで、学生からの反応を得やすくなります。

こうした「逆求人型」と呼ばれる就職サービスが爆発的に普及しているのも、学生の価値観の変化と言えるでしょう。

初めて新卒採用を行う企業がぶつかる「壁」

最新の市場動向を踏まえた上で、初めて新卒採用を行う企業がぶつかる「壁」には次のようなものがあります。それぞれ、対策の例と合わせてご紹介します。

ぶつかる「壁」 内容 対策
「学生認知度」の壁

・新卒採用をしていなかったため、学生から「就活におけるエントリー先」として認知されていない
・先輩や口コミサイトなどから情報が得られないため、応募しづらい

・企業側から求める人材に直接アプローチできるダイレクトリクルーティングなどの手法を使う
・社員との面談やインターンなどの機会を積極的に提供し、深く知ってもらう

「採用スケジュール早期化」の壁

・就活ルールによる広報解禁日から活動を開始すると、早期から動いている他社に遅れをとってしまう
・具体的にいつから何をすればよいのかが分からない

・大学3年生の夏または秋・冬にインターンシップを開催し、学生には早期から接触しておく
・新卒採用サービス提供会社から、市場や他社の動きについての情報提供を受ける

「内定辞退」の壁

・内定者へのフォローに関するノウハウがなく、辞退されてしまう
・内定辞退を想定せずに活動計画を組んでしまい、欠員補充がうまくできない

・定期的な懇親会やインターン受け入れなど、内定を出したあとのフォロー方法も設計しておく
・直近の市場調査で内定辞退率をチェックし、辞退を想定した活動計画・予算を組む

「入社後の活躍・定着」の壁

・社会人経験のない学生をポテンシャルのみで評価するスキルが面接官になく、数回の選考では自社に合う人材を見極めきれない
・自社が本当に必要としている人材の要件定義ができないまま採用し、入社後の活躍・定着が期待を下回ってしまう

・面接官向けの研修を受ける
・学生の「就活マニュアル」の中身を知り、効果的な質問や回答の見極め方を考えておく
・ターゲットの学生層を根拠なく学歴で絞ったり、曖昧な言葉で要件定義せずに、適性検査などを活用して明文化する

「新卒採用の目的を見失う」の壁

・中途採用と同じ即戦力性を求めたり、長期的な人員構成を考えずに「今すぐ必要な人数」で採用人数を決めてしまい、結果として採用できない/採用しすぎなどの問題が起こる

・自社が新卒採用をする理由を明確にする
・組織の長期的な採用計画を立て、それに則った人数を採用する

どの問題も大変深刻ですが、「新卒採用の目的」は採用活動のみならず、人事制度など経営の全般に影響するものです。なぜ中途採用ではなく新卒採用なのか、その目的とメリット・デメリットをきちんと整理して、新卒採用に臨みましょう。

参考記事:「終身雇用が崩壊した今、それでも「新卒採用」をするメリットは?」人事ZINE

初めての新卒採用の準備 〜採用手法から人事制度まで〜

それでは、具体的にどうやって初めての新卒採用を進めればよいかを解説していきます。

新卒採用をするということは、それまで在籍していた社員とは違う状態からスタートする人員が入ってくるということでもあります。

新卒社員の受け入れにあたって、整えておきたい制度などについてもご説明します。

初めての新卒採用におすすめの採用手法

まず、どのような方法で新卒採用を実施するか、またどの業者と契約するかなどを決めなければなりません。

ぶつかる「壁」が多い、初めての新卒採用では、次の手法がお勧めです。各手法について代表的な会社の提案を聞いたり、自社に会いそうな手法を選んだ上で複数の会社から提案を聞くなどして、比較検討するのがよいでしょう。

ダイレクトリクルーティング

学生のプロフィールを見て、企業が「選考を受けてみませんか?」とオファーする、いわゆる「逆求人型」のサービスです。各社の調査にもあるように、学生のナビ離れに反比例して急成長しているのがダイレクトリクルーティング市場です。つまり、これまでの主流だったナビ媒体サイトが抱えるようになった課題を解決する形で、学生・企業に選ばれるようになってきたと言えます。

学生が条件や社名などを検索してエントリーするナビ媒体サイトと異なり、認知度の低い企業でも、一人一人に宛てた丁寧なオファー文を書くことで、学生とのマッチングが見込めます。

代表的なサービス名では、パイオニアであり学生利用率1位*の「OfferBox」(*2020年卒学生の調査で「活用する就職関連サイト」として逆求人型では1位)、他にも「キミスカ」(同2位)、「iroots」(同3位)などがあります。

長期インターンシップ

社会人経験のない学生を、いわば「ポテンシャル」によって採用する新卒採用において、書類選考や数回の面接で見極めるのは至難の業です。そこで「長期インターンシップ」は、学生にとっては社会人の仕事を経験できる貴重な場であり、企業にとっても、採用前に学生の自社への適性を見極めることができます

意欲の高い学生は、早くからインターンシップに積極的に参加します。そうした学生を受け入れることで、優秀な学生に早くから接触できるだけでなく、自社に適した人材かどうかをじっくり見極めてから採用選考に呼び込むことができます。また、長い期間会社に通ってもらうことで、ただ就活サイトで出会った学生よりも深い関係を築きやすいメリットもあります。

例えば、人気業種(職種)の「実務」を経験できる、営業やインサイドセールスなど特定のスキルが身に付く…など、学生に喜ばれそうなプログラムを用意すると集客もしやすいでしょう。

新卒人材紹介サービス

認知度の低い企業や、インターネット上に情報が少ない企業が初めて新卒採用を行う場合、学生から見ると「この会社について、信頼できる情報はあるのか」という点が不安要素になります。

企業説明会などに参加しても、「本当に残業は多くないのか」などといったことは社員には直接聞きづらく、「この会社の実態はよくわからない」と思ってしまう可能性があります。

新卒人材紹介サービスでは、学生個人に担当のキャリアアドバイザーが付いて就活支援を行い、さまざまな企業の求人を紹介します。その中で自社を学生に紹介してもらえば、学生にとっては、キャリアアドバイザーという「第三者」を通した信頼度の高い情報になります。

また、社員に聞きづらい踏み込んだ質問も、キャリアアドバイザーを通してなら、匿名で聞くことができます。

ちなみに新卒人材紹介は、その大半が初期費用がかからず成功報酬型であるため、万が一採用できなかったときのリスクも少なくなります。

新卒社員の入社までに整えておきたい制度

既存社員とは異なり、社会人経験のない、まっさら状態からスタートする新卒社員が入社するにあたって、整えておきたい制度をご説明します。

初任給

新卒採用では、求人広告にも「初任給」を掲載するのが一般的です。学生も他社の初任給額を多数見ているので、最低でも20万円は超えておいたほうが安心されるかもしれません。

なお「初任給」に厳密な定義はなく、新卒者が入社して初めてもらう給与を指すことがほとんどです。基本給だけを「初任給」としても構いませんし、「見込み残業代」や「調整手当」などを含んだ金額で提示することもできます。

初任給の設定の仕方としては、基本的には給与体系における一番低いレンジ(幅)に収まる程度の金額で、既存社員にとっても納得感のある金額にするとよいでしょう。

相場を気にして初任給を高くしすぎると、入社数年の新卒者と既存社員の給与額が逆転してしまい、不公平感に繋がる恐れがあります。また学生は、初任給の高さがその企業の給与水準の高さと必ずしも一致しないことや、初任給のみによって入社先を選択することの危険さをきちんと知っています。

他社と競って安易に初任給を引き上げるよりは、既存社員の給与体系との整合性や、長期的な人員計画・育成計画などを鑑みて、自社にとっての適正な金額を提示しましょう。

各種手当

※手当は初任給に含まれる部分もありますが、基本給や見込み残業代など全ての社員に支給される手当とは別の、特定の条件による「住宅手当」「家族手当」などについて解説します。

学生は、給与(年収)や福利厚生なども企業選びにおいて重視しています(i-plug「【学生アンケート】2021年卒の企業選びの基準」より)。当然、手厚い手当があることは魅力づけの武器にもなります。

しかし、こちらも初任給と同じく、既存社員とのバランスと、長期的な経営計画が重要になります。「同業他社が資格手当を付けているから」など、競争のために安易に手当の種類や金額を増やすことは、お勧めできません。

手当は、実力や実績とは何ら関係のないものです。賃貸住宅に住んでいるからもらえる住宅手当、扶養家族がいるからもらえる家族手当、といった諸手当は、「マイホームを買うなということ?」「扶養家族がいなくてもお金が必要なのに」と従業員の不公平感を産むこともあります。会社として評価した実力・実績などに対して支払う給与を増やすほうが、健全かつ安全です。

また、一度支給を始めた手当を廃止することは「就業規則の不利益変更」であり、非常に苦労するため、経営環境の変化などに対応しづらくなるという覚悟も必要です。新卒採用を始めて社員が多くなっていく前に、廃止しておいたほうがいい手当もあるかもしれません。

新卒採用をする際には、

  • 今ある手当は今後も持続可能なものか
  • 今ある手当は会社の経営・人材育成において効果を発揮する意味合いのものか

を整理した上で、基本の給与額と合わせて見直しておくのがよいでしょう。

人事評価(考課)制度

前職での給与水準やスキルの希少性などによって年収が一人一人変動する中途採用と異なり、新卒採用では全員が同じ初任給額からスタートし、評価などによって昇降給していくのが一般的な流れとなります。そこで、人事評価(考課)制度を整える必要も強まります。

PDCAを回し、育成やモチベーションアップを目的とする「評価」と、給与の昇降額を定めるための「考課」がありますが、この2つが一体となり、目標管理制度とも合わさった形が一般的でしょう。半年〜1年に一度、または最近ではもっと短いサイクルで、上司との面談によって目標を設定し、期の終わりに評価をフィードバックされ、その評価によって給与額が決定する、というものです。

こうした制度は、育成スピードを早める・給与額を公平に決めるというだけでなく、自分が会社に貢献しているという実感や承認欲求の満足、上司との相互理解など、人材の定着にも繋がります。

反対にもし納得感のある人事評価(考課)制度が整っていなければ、何を頑張れば評価されるのかわからなくなったり、実質的に年功序列の給与体系になってしまったりと、最近の若い世代の価値観とずれた組織運営になってしまいます。

もし既存社員に対して明確な評価基準や昇降給の制度がないのであれば、この機会に設計するのがよいでしょう。

福利厚生

学生は、福利厚生についても重視しています(i-plug「【学生アンケート】2021年卒の企業選びの基準」より)。

できたばかりのベンチャー企業や、規模の小さい企業では、大手企業と福利厚生で競って勝つことはおそらく難しいでしょう。

また、手当と同様に福利厚生もまた、業務と無関係に全従業員に与えられるものであり、一度開始すると廃止には抵抗が起きるものです。

さらに、「同一労働同一賃金」の法改正によって、福利厚生は正社員だけのものにしておくこともできなくなりました。アルバイト従業員などを雇用している場合は、その全員にも同様に福利厚生を用意しなければ、法律違反となってしまうのです。

しかし、学生が喜ぶものは必ずしも「高額なカフェテリアプラン」や「グループ従業員割引」だけではありません。調査「就職先を確定する際に決め手になった項目」からもわかるように、学生は自分の成長できる環境や、社風、あるいは勤務地なども非常に重視しています。

福利厚生サービスや金銭的なメリットに限らず、下記のように「自社で働くメリット」を打ち出すことで、学生に選んでもらえる可能性は高くなります。

福利厚生やその代替として打ち出せるメリット:

  • 副業やフレックス勤務を認めているので、趣味や自己研鑽にも本気で取り組めます!
  • 社員同士は仲がよく、スポーツ活動や飲み会などに補助金が出ます!
  • 転居を伴う転勤がありません!
  • 部署異動の希望を提出できる社内公募制度があります!
  • サンクスカードで褒め合う文化があり、モチベーション高く働いています!

こうした制度は採用のみならず、社員のエンゲージメントや生産性の向上にも効果があるので、お勧めです。

OJT

社会人経験のない学生を新卒採用する場合には、「教育体系」が非常に重要です。

例えば、営業職を中途採用する多くの場合は、他社で営業職をしていた人材を採用します。そうなると、商材や多少のスタイルは違えど、営業の基本的なスキルは教える必要がありません。

しかし新卒採用の場合は、まず社会人スキルの基礎、つまり言葉遣いや立ち居振る舞いのマナーから、メール文作成のマナー・ルール、自社独自のルール、業界独自のルール、グループウェアの使い方、さらに人によってはパソコンやExcelの使い方などから、教えてあげなければなりません。

そして大半の企業では、これを缶詰式のスクール形式で覚えさせてからの配属ではなく、「OJT(=On-the-Job Training)」、つまり、現場で実際に業務をしながら覚えさせる仕組みをとっています。

一般的には、

  • 新入社員向けビジネススキル・マナー研修(外部講師)
  • 就業規則、社内ルール、社内ツールの使い方などのオリエンテーション(人事・労務・システムなど社内担当者)
  • 理念研修、経営計画の説明(経営者や人事担当など)
  • OJTによる実務研修(配属先の先輩社員)

といった流れで行われます。

新卒採用を行う際には、入社後にどのようなスケジュールで、誰が業務を教えるのか、入社までに余裕を持って計画を立てておきましょう。

新卒採用を始めるときに一番重要なこと

長期的な経営計画・人員計画を踏まえた「採用計画」

新卒採用を始めるにあたって最も重要なことは、長期的な経営計画・人員計画を踏まえたう上で「採用計画」を立てることです。

採用計画とは、「今年何人採用するか」ということに止まらず、「何年後に、そのうち何人が退職しているか」「翌年以降は何人採用するか」「何年後にどんな人材がそろっている必要があるか」などを、事業内容や経営環境の変化に照らして綿密に設計することを指します。

一般的に新卒採用は、その後の会社経営を長期的に担う人材をポテンシャルで採用します。直近で必要な人数を充足するために大量に採用したり、逆に採用をしばらく止めたりすると、数年後、数十年後の組織の人員構成に大きなインパクトとなって返ってきてしまいます。

働きがいのある会社の年齢分布図は、若者が多くマネジメント者が少ない「ピラミッド型」か、働き盛りの中堅層が多めではあるものの極端な偏りがない「釣り鐘型」だと言われています

反対に「逆ピラミッド型」になると、力の強い年配者が多くなりすぎて若手が発言しづらく、また後輩がいないためにいつまでも雑務をこなしたり、人に教えたりマネジメントをする経験ができないまま年数を経て役職者になってしまったりと、問題が多くなります。

その年の新卒採用が、数年後、数十年後にどんな組織を作っていくのか、長期的な目線で考えることが重要です。

おわりに

企業が初めて新卒採用を行うということは、大きな変化です。きっと苦労する部分も多くありますが、それ以上にメリットも大きいため、ほとんどの企業は成長過程において、あるタイミングから新卒採用を開始します。

そのメリットを享受するためにも、会社の数年後、数十年後までの人員構成をシミュレーションし、慎重な採用計画を立てて、新卒採用に臨みましょう。

米田 彩香

米田 彩香

新卒で入社した前職の老舗中小企業にて人事・採用を5年間担当。紋切り型の就活スタイルに疑問を持ち、OfferBoxの理念に共感したため2019年3月に株式会社i-plug入社、インサイドセールスチームに所属。夢は子供が独立したあとに学生街で食堂を開くこと。