内定者研修を通じて新卒採用人事が行なうべきこと|「入社してよかった」と思ってもらうために

内定者研修の内容や実施する目的は企業によって様々ですが、一般的には下記のような目的で実施している企業が多いです。

  • 内定者の不安や悩みを解消する
  • 内定辞退を防止する
  • 企業の理念や業務への理解を深める
  • 入社前にスキルを身に付けて即戦力として活躍してもらう
  • 企業と内定者のコミュニケーションを図る
  • 同期になる内定者同士との親睦を深める

「どのような研修を行なえば上記の目的が達成されるのか?」「何をもって目標達成とみなせばいいのか?」「本当に内定辞退が抑制できるのか?」新卒採用の担当者の方々は気になるところだと思います。

そこで今回、人事ZINE編集部は、中小企業での新卒採用人事の経歴を持ち、現在は新卒採用アドバイザーとしてご活躍されている谷間さんに、過去に実施した内定者研修の役割や取り組み方についてお聞きしてきました。

内定者研修のミッションは「企業側の入社してほしい」と「内定者の入社したい」を1本軸で繋げること

人事ZINE編集部
ーー企業によって内定者研修を実施する意向は様々かと思います。谷間さんは、新卒採用活動において「内定者研修」をどのように位置付けていましたか?

谷間さん
私が内定者研修を実施する上で常に目標として置いていたののは「内定者1人1人が “ちゃんと” 入社してくれるようにする」 ということ。”ちゃんと” というのは、内定者の立場から見て、”その会社に対して、不安なく能動的に入社の意思を固めてくれた状態” ということです。

もちろん内定者研修は「内定辞退の抑制」に繋げるためでもあるのですが、単純に採用人数を確保したいという企業側の都合で「無理に入社させる」わけにはいきません。

入社前の不安を全て取り除き、この会社に入社したいと心から思ってもらえないと、結局入社後に定着せずに企業も内定者本人も不幸になってしまいますから。

私の場合は、企業の「入社してほしい」と内定者の「入社したい」が1本の軸で通るように内定者をフォローすることが、内定者研修のミッションだと思って取り組んでいました。




ーー具体的にはどのような研修内容を実施していましたか?

大きく2つに分けると「複数の内定者に対して行なう全体研修」と「内定者1人に対して行なう個別研修」があります。

特にユニークなことを行なっていたわけではなく、内定者と接点と持つための至って普通の内容です。例えば、

  • 内定者同士でのグループディスカッション
  • 食事会などの親睦会イベント
  • 各事業所でのオリエンテーション
  • 随時の個別面談
  • テーマ課題の提出

などです。

個別の場合は、研修というよりは面談や相談会のような内定者フォローがメインですね。

全体研修は、これから仲間になる同期とワークをしてもらったり、社内行事に参加してもらって社員と交流させたり、マメに接触する機会を作りながら自社のことをもっと深く知ってもらうことが目的です。

説明会、選考、そして内定までほぼ人事としか会ったことがないというのは不安に感じて当然ですよね。他の社員や同期とも会って、いろいろな角度から会社のことを見て、会社のことをより多く知っている方が選びやすいはずです。




ーー親睦会のほか、内定者複数での研修はどういったテーマを扱っていましたか?入社後の新入社員研修とは全く別物でしょうか?

新入社員研修と違って、教育をしたり個人を評価したりするのが目的ではないので、この仲間と働きたいと思えるような、またその場を楽しく思ってもらえるような軽めの内容にしていました。

例えば「どういう社会人になりたいか?」をお互いに話し合ってもらったり、学生さんでも考えられるようなテーマをチームでディスカッションして発表してもらったりなどです。

全体研修や社内イベントはできるだけ多くの内定者が参加できるように調整はしますが、授業や大学の活動が忙しい学生さんもいますし、まだ就活を終えていない学生さんもいるので基本的に参加は任意です。

研修に参加している様子を見ていると、「気持ちが離れているかも」とか「まだ他と迷っているところがあるのかも」ということがわかるので、そこに対して個別に相談ベースで話を聞いて不安を解消していくようにしていました。




ーー「入社前にスキルを身に付けて即戦力として活躍してもらう」というプログラムを組んでいる企業もあるようなのですが、これも内定者研修として捉えてもいいのでしょうか?

即戦力がどういうものかにもよりますが、入社後になるべく早く活躍してもらうために、内定者の時点から育成の仕込みしていくという目的があるのであれば、もちろん必要な研修ですよね。

特に、既に入社の意欲が高い内定者に対して、そこからさらに「この会社で活躍するにはどうならなければならないのか?」また「自分はどういう社会人を目指すのか?」ということを意識してもらうのにはとても有効だと思います。

ただ、「そもそも内定を受けた会社に本当に入社するべきなのか?」と悩んでいる内定者もいるので、その人たちを置き去りにするわけにはいかないですよね。

現時点で「不安や迷いがある人をフォローして入社してもらう」のか「ある程度入社の意欲が高い人に確実に入社してもらう」のか、どちらも重要ではあるんですけど、私の場合は、新卒採用担当が私1人しかいなかったので、内定者研修には前者に重きを置いていました。

内定者研修のスケジュールや内容は臨機応変に!

人事ZINE編集部
ーー新卒採用活動を1人で全て担うとなると、まだ選考を行なっている中で内定者フォローを行なったり、後半になると次年度の計画も考え始めたりすることもありますよね?その中で内定者研修の優先度はどのくらいの位置付けだったのでしょうか?

谷間さん
そうなんです。本当は全部大切にしたいのですが、どうしてもリソース上全てに全力投球できないこともあり、優先度はその時の状況で変わります。

まず自社の採用目標人数を達成することが最優先だった場合、まだその人数を達成できる見込みが十分になければ、集客に力を注がなくてはなりません。

もちろん内定者フォローもしっかりと行なっていかなくてはならないのですが、内定者全員に対して小まめに接触することは難しくなります。

その場合は、課題を渡したり、推薦書籍を提案したりして、内定者研修を開催せずともできる方法で内定者に自社のことを考えてもらう時間を一時的に設けたりします。

また、個別での初回の内定者面談を行なったあとは、各内定者のその時点での入社意欲や懸念度合いによって接触頻度を調整するといったこともします。

最終的には、全員が “ちゃんと”入社してくれる状態に持っていけるように、1人1人と向き合うようにしますが、新しい人の集客と内定者フォローがかぶってしまう時期はどうしてもあるんですよね。




ーーでは、カチっと計画を立てて実施するというよりは、内定者1人1人に合わせて臨機応変に内定者研修の内容を変えていたという感じでしょうか?

そうですね。採用計画の中で年間のスケジュールとして「時期的にこのくらいにこのイベントに参加してもらおう」「内定が早かった子には選考期間が続いている間にこの課題をやってもらおう」というのはざっくりと決めていましたが、計画通りに開催していくというよりは、その時に必要なことを実施するという感じでした。

まずは、先ほども言ったように、内定者が出た時点で個別面談を随時実施して、できるだけ接点を多く持ち続けるようにします。

そして、学生さんからの「こういうのがあったら嬉しい」「もっと機会を増やしてほしい」といった意見から各研修の優先度を決めたり、その時々の状況をウォッチして研修テーマや喋る内容を変えたりします。

やはり入社の意思が薄くなってくると参加率も低くなる傾向があるので、そういう学生さんには特に密にフォローをかけるようにしていました。

基本的には1人ずつ向き合って悩みを聞いたり、その時何を感じているかを汲み取って、入社に対する懸念事項を解消していくのが最優先ですね。

内定者研修を通じて、内定者1人1人が考えていることに向き合う

人事ZINE編集部
ーー内定を受けた後にまだ悩んでいるポイントとしては、どのような例がありますか?

谷間さん
「会社の規模感」とか「大手にすべきか中小にすべきか」とか「福利厚生」、あと「入社後じっくり教育してくれるか」とかが多いのですが、その根底にあるのは「ここを選んで将来的に大丈夫なのか?」という不安です。

「自分はこういう社会人になりたくて、就職先にはこういうのを求めているのだけれど、ここが明確になってなくて・・・」というのを聞き出して、「それならウチの会社でしっかり解消できるよ!」というように、内定者が不安に感じていることを1つずつ解消していきます。

本人が全て納得した上で気持ちよく入社してもらうのが大事です。もし小さな不安でもそれを抱えたまま入社して結局解消されないまま「入社してやっぱり後悔した」というのだけは避けたいですよね。




ーー個別のお悩みの中で「これはなかなか解消するのは難しいな」という経験はありましたか?

よくあるのが「内定者本人は満足しているけど、親が反対している」という最終的にどう決断してくれるかわからないものです。

極端な話、「大手じゃないと絶対ダメ」と言われて、中小企業は自社のほかの魅力をアピールすることはできても、事実上は大手になることはできないですよね。

親御さんが不安に思っていることに対する答えは準備できるのですが、企業が内定者と親御さんの間に入って何か提案をするというわけにはいかないので、最終的には自分で解決するしかないんです。

自分が行きたい理由をしっかりと説明して「親はまだ少し納得していないけど私はここがいいです!」と言って入社してくれた人もいます。

その逆に、解決の糸口が見えず、見切りをつけたこともあります。親族が皆公務員で、民間事業に対する不安がいくつかあったようなのですが、どれも自社で解消できないことだったんですね。

そこを解消できるなら粘ってフォローするべきなのですが、解消できない不安が明確に残ったまま無理矢理入社してもらうのは、どのみちお互い不幸になってしまうので断念しました。




ーーありがとうございました。最後に、「内定者研修において大切なこと」について、新任の新卒採用担当者の方々に向けてメッセージを頂けますか?

冒頭で申し上げたことに戻りますが、内定者の立場に立って「内定者全員が ”ちゃんと” 入社してくれる」ことを目標にすることだと思います。

それを内定者研修を通じて実現するためには、「内定者1人1人をしっかりと見て、内定者が考えていることや不安に思っていることに向き合ってあげる」ことが大切です。

懸念を解消できていないままだと入社したとしても不幸になってしまうので。会社のことをよく知ってもらい、理解を深めてお互いの溝を無くしていけるような研修にしていただければと思います。

最後に

今回は、新卒採用アドバイザーの谷間さんに、内定者研修の役割や内定者との向き合い方について、過去をふり返ってもらいながらお話しいただきました。

企業によって内定者研修の目的は様々で、また採用活動の中で内定者研修に割けるリソースにも限りがあるかと思います。

もちろん企業としては自社に入社してほしいからこそ内定を出しているはずですが、企業が入社までに内定者にしてあげるべきことは何かを一歩引い視点で考え直してみましょう。

内定者が実際に入社して社会人となった時に「この会社に入社してよかった」と思ってもらえるように、個々の内定者に向き合って内定者研修に取り組んでみてはいかがでしょうか。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部