OFF-JTを自社の教育制度に導入し、効果を出すための3つのポイント

人事・教育研修担当をされている皆様の会社では、どのような教育研修体系をお持ちでしょうか?

教育研修と言えばOJT、OFF-JTが中心となりますが、それぞれが長所、短所を持っており、目的に応じて最適な教育手法を選択して行くのがベストです。

「OFF-JTは費用がかかるので、社内の理解を得られない」
「現在行っているOFF-JTの運用内容に不足感がある」
「今後OFF-JTを導入していきたい」

本記事では、このようにお考えの人事・教育研修担当者の方へ「OFF-JTの効果的な導入に向けた3つのポイント」についてご紹介します。

企業の教育研修制度におけるOFF-JTとは?

本記事はOFF-JTメインとなりますが、OJTとの比較という形で語られる場合も多く、最初にごく簡単にそれぞれの特徴、メリット、デメリットをご説明します。

OJTの特徴

On the job training (職場内教育)の略。職場内での業務を通じ、実務に即した形で教育を行います。

【長所】

  • 実務に即した即応性の高いスキルを習得できる。
  • 継続的に教育できる。
  • 教育にかかる時間と費用を節約できる。

【短所】

  • 指導員の教え方、スキルのバラツキによって習熟度が変わってくる。
  • 指導員の時間的、心理的負担が大きい(現場、指導員に丸投げになりがち)。
  • 目標設定や達成評価などの仕組みがないと、「仕事なのか教育なのか」の区別が難しくなる。

(2)OFF-JTの特徴

Off the job training (職場外教育)の略。職場から離れ、会議室など一か所に集まって目的に沿った教育を受けます。講師は外部の専門的な人材に依頼する場合と、自社内の社員が講師を務める場合があります。

【長所】

  • 専門的、体系的な知識習得に向いている。
  • レベルにバラツキがない教育が可能。
  • 普段の業務では関わらない社員と接点を持つことも可能。

【短所】

  • 時間と手間、費用がかかる。
  • 実業務にどの程度効果が出たのかを測定するのが難しい。

以上簡単ですが、OJTと対比してのOFF-JTの特徴です。

教育研修の種類は大きく分けてこれに自己啓発(Self-development)を加えた3つの種類が存在します。

OFF-JT導入の難しさ

令和元年度に実施された「能力開発基本調査」によると、OFF-JTと自己啓発支援に費用支出を行った企業は、57.5%と約6割弱でした。

一方で、どちらにも支出していない企業は41.6%で約4割強でした。

「OFF-JTのメリットは理解しつつも、高い費用をかけて導入するとなると難しい」同調査では、OFF-JTは企業規模が大きくなるほど実施率も高くなる傾向も示しています。

大企業で独立した研修部門が存在して、教育予算も潤沢にあるならば、悩みも少ないかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。現にOFF-JTに費用を支出していない企業が4割以上という調査結果から見ても、短期的な効果が見えづらいOFF-JTへ投資する事をためらう企業も多い事がうかがえます。

「人材育成を行う時間がない」「人材を育成しても辞めてしまう」実際に現場からはこのような声も聞こえてきます。

このように時間と費用がかかる教育研修に対する周囲の見方は非常にシビアなものがあります。教育研修担当者としては、こうした声を真摯に受け止めつつ、

「自社の研修運営が本当に費用対効果を最大限発揮するものになっているか否か?」

を常に意識して、業務PDCAを回していく必要があると言えるでしょう。それでは次に本題の「OFF-JTの効果的な導入に向けた3つのポイント」に入っていきます。

OFF-JTの効果的な導入に向けた3つのポイント

OFF-JTを導入し、効果を上げるために役立つポイントを3つご紹介します。

外部研修をカスタマイズしよう

外部講師に依頼する研修は、極力自社の状況に沿った内容にカスタマイズしましょう。

例えば、社内で「部長研修をやってほしい」というニーズが上がったとします。社内では上級管理職に教えるノウハウが無いため、研修会社から講師を派遣してもらう事にします。

この時、教育研修担当者は、「自社のビジネスについて」「当社におけるリーダーシップとはどんなものか?」「現状どういったリーダーシップに課題を感じているのか?」といった内容を研修会社、外部講師と事前に擦り合わせて、研修のコンセプトやコンテンツを自社に合った形に作りこんでいく必要があります。

そのためには、研修担当者は自社が抱える課題を思い込みではなく、正確に把握しておく事が必要です。会社によって、企業文化も組織の形態も様々です。研修会社各社では、パッケージとしての「マネジメント研修」をラインナップしておりますが、費用も概して高額になります。

「これらのパッケージをベースにして、どれだけ自社向けにカスタマイズできるか?」が研修満足度に直結します。

部長レベルの研修ともなれば、その必要性や参加の動機づけについて、研修冒頭に企業トップから話してもらうといった事も一つのアイディアですし、グループディスカッションなどのセッションを設けて、自社の課題について話し合ってもらうのも良いでしょう。

外部講師とは事前に十分に打ち合わせをしている事で、自社ネタを交えつつ講義してもらう事も可能です。一般論を話されるよりはずっと受け入れやすいと思います。誰もが普段の業務が忙しく、研修参加に時間を取られるのが嫌な方も実際多いでしょう。

それならば研修担当者としては、事前に充分にカスタマイズした研修内容にして、「全然期待してなかったけど、思ったより悪くなかったよ」と言ってもらえるような効果を狙いましょう。

研修の内製化を進めよう

外部から講師を招いた研修は、当然ですが費用もかかります。自社で実施できる内容は、自社で講師を育成して順次「内製化」を進めましょう。

ここで、再び令和元年度実施の「能力開発基本調査」の調査結果を見てみます。

新入社員研修やビジネスマナー、中堅社員研修などが上位を占めています。比較的導入しやすそうなテーマを選び、少しずつ内部で実施していく事で、研修費用の節約にもつながりますし、社内にノウハウが蓄積していきます。

しかし、必ずしも内製化がベストとは限りません。高度なマネジメントや専門性の高いテーマなどは、社内にノウハウが無い場合も多く、外部の専門講師に依頼しなければ対応できないものもあります。

外部の専門講師は研修のプロですので、教え方も上手です。また、「外部の専門家が言った事だから」という「後光効果」も見逃せません。

したがって、「外部のリソースも活用しつつ、並行して内製化も進めていく」

こうした費用対効果を意識した教育計画全体のハンドリングが、教育研修担当者には求められると思います。

意味のある研修効果測定を行おう

既存の研修効果測定をブラッシュアップする方法を更に3つに分けてご紹介します。研修効果の測定は、教育研修担当者にとって頭の痛い問題の1つです。

「効果測定をきちんとやろうとするほど手間と費用がかかる」
「何をどこまでやるのか?」

という問題があります。

そして研修の効果測定と言えば、「カーク・パトリック」の4段階評価が思い浮かぶ人事担当者の方も多いのではないでしょうか?

企業によってどこまで効果測定を行っているかは様々だと思いますが、この4段階評価で言えば、レベル1「受講後のアンケート」、レベル2「理解度テスト」などは比較的多くの企業で行われていると思います。

4段階モデルである以上、「人事部としては4段階までの効果測定を全ての研修で実施するのがベストか?」

これも必ずしも正しいとは言えません。ここからは、それに対する答えと自社の効果測定を考える上で役に立つヒントをご紹介します。

①効果測定の目的を考えよう

ところで、「研修の効果測定は何のために実施していますか?」

■効果測定の目的例

  1. 研修の受講者満足度がどうだったかを知り、次回の研修立案に活かしたいため。
  2. 社長に研修成果を報告するため(人事部の実績アピールのため)。
  3. 受講者の研修理解度がどのくらいなのかをテストしたいため。
  4. 受講者の特定の行動がどう変わったかを確認したいため。
  5. 研修によって、金額にして幾らの成果創出につながったのかを具体的に知りたい。

例えば、仮に上記1だけを目的にするのであれば、先述の4段階のうち、受講後アンケートだけを実施すれば良く、わざわざ手間をかけて経済効果分析などする必要はありません。

新入社員研修に業績・成果への直結までを求める企業はおそらく少ないと思います。


また、目的を3だけに絞るのであれば、理解度テストを実施する、又はアンケートの質問内容を工夫して、「〇〇についてどう思うか?」などの自由に書かせる質問項目を幾つか盛り込んでも良いと思います。

要は、研修内容や効果測定の目的をどこに置くかによって、やるべきことは違うという事です。

②受講後アンケートの内容を見直そう

研修受講後アンケートを実施している企業は多いと思います。そのアンケートの中に「研修への満足度を5段階評価して下さい。」という設問のみがあったとします。

ところが、これだけだと「何に対する満足なのか?」は人によって捉え方が異なります。

「講師の話し方」なのか?
「研修内の特定のセッション」なのか?
「自分自身の学びが得られた事」なのか?

全体への満足度はもちろん質問するべきですが、それぞれ質問項目を細分化して質問する事でより具体的な効果測定につながります

そして、先述の「何のためにアンケートを取るのか?」によって、質問の構成も変わってきます。

理解度を確認したいならば、色々と自由に書かせる「オープン・クエスチョン」が多めになるでしょうし、満足度をメインにするならば「講師」や「会場」「研修時間」など、細分化した質問項目が増えるといった形です。

既存のアンケートを少し見直すだけで、効果測定の精度もグッとアップしますよ!

③360度評価等の既存の仕組みを活用して効果を測定しよう

「受講者の特定の行動が研修を通じてどう変わったのかを確認したい」

例えばリーダーシップ系の研修などで、「行動の変化」について効果測定を行う場合、研修直後のアンケートのみで効果を測定するのは困難です。

研修を通じて気づきを得て、それを職場に戻って試してみる。こうした職場でのトライ&エラーを経て行動が徐々に変わっていくものなので、一定の期間をおいた評価が必要です。

そこで例えば、360度評価を実施している企業であれば、これらの評価項目のうち「リーダーシップに該当する項目の幾つかの向上」を研修目的として事前に設定します。

これを元に研修コンテンツをデザインして実施。そして、事後の360度評価でこの数値がどう変わったかを評価します。

評価結果の確認だけでなく、必ず上司と面談を行い「どの程度達成できたか?」「なぜできなかったのか?」「今後どうしていくか?」などを話し合います。

人事評価制度の行動目標に設定するのも良いでしょう。

360度評価がない場合でも、一定期間経過後に上司と面談する、周囲にヒアリングするといった形でも良いと思います。

ここでは、事前に「何の目的で研修をするのか?」がまず明確にあって、そのための「研修デザイン」「評価(=効果測定)の仕組み」が意図を持って連動していることが大切です。

まとめ

今回は、「OFF-JTの効果的な導入に向けた3つのポイント」についてご紹介しました。

OFF-JTの導入、運用状況は各社それぞれだと思いますが、少しでも当てはまりそうなものから着手してみる事をおススメします。

時間と費用がかかり、場合によっては敬遠されがちなOFF-JT。「自社のビジネスの特徴、課題を考慮せず、漫然と研修を運営するだけ」「意味のある効果測定を行わず、反省を次回に活かせていない」ようだと、受講者の研修満足度もなかなか上がりません。

そして受講者の研修満足度が上がらなければ、結果的に経営層に対しても「OFF-JTに優先的に予算を割く必要性」が伝わって行きません。

しかし、先にも触れたように、教育研修の導入においては、OJT、OFF-JTそれぞれの特徴を押さえて、目的に合った研修手法を選択する事が大切です。

人事・教育研修担当者には、これを既存の研修業務の改善を通じて、社内、そして経営層に対してボトムアップで発信していく事も求められています。

また、記事中では360度評価の事例も出しましたが、「既存の人事評価制度との連携も意識した人材開発体系の構築」など、常に「全体」を意識して日々の業務に取り組んでいきましょう。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部