入社時の【身元保証書】提出の目的とは?作成のポイントとテンプレートを紹介

社員の入社時に提出してもらう書類のひとつである「身元保証書」。人事担当のあなたは、「身元保証書」の目的や意味、身元保証人の責任などについて、しっかりと説明した上で渡していますか?

十分な説明をせずに提出を求めると、「なぜ提出が必要なのだろう」や「損害賠償の文字が書かれているので不安だ」などと、社員が提出することに不安を感じたり、提出を拒まれる可能性があります。

この記事では、「身元保証書」の意義や目的、社員に納得して提出してもらうためのポイントなどについて詳しく解説します。また、身元保証書のテンプレートも掲載していますのでぜひ活用ください。

身元保証書の提出が意味することとは

身元保証書は法律や制度によって、提出が義務付けられている書類ではありません。それでは身元保証書の提出には、どのような意味があるのでしょうか。

身元保証書の役割とは

身元保証書は、入社する本人が社会人としてふさわしい人物であることと、入社後に会社に損害を与えた場合に、本人と連帯して賠償責任を負うことを身元保証人が保証する書類です。

一般的には、次の3つの役割があります。

  1. 入社を予定している人の身元がはっきりしていることの証明
  2. 入社を予定している人が社会人としてふさわしいことの証明
  3. 会社に対し損害や損失を与えるような重大な不祥事を起こしたときに、連帯して賠償をすることの保証

身元保証書の法的義務

従業員に対して身元保証書を提出させることは、労働基準法などの法律では、特に規定はされていません。

しかし、実際には多くの企業で身元保証書の提出を求めています。

そのため、就業規則や雇用契約書などで、「採用の条件として身元保証書を提出しなければならない」と明記した場合には、未提出を理由に採用を見送ることが可能です。

身元保証人となる人

身元保証人の人数や従業員とどのような関係の人を求めるのかなど、身元保証人についての具体的な内容は企業が自由に決められます。

しかし、万が一の場合に損害賠償を求めなければならないので、第三者の保証として信頼性があることや、経済能力がある親や親族などの血縁者から1~2名を身元保証人とすることが一般的です。

ただし、事情により近親者2名に身元保証人を頼めない場合や、外国籍で日本国内に身元保証人となる人がいないケースなどもあるため、会社は柔軟に対応することが必要でしょう。

身元保証書を提出させるときの注意点

これから入社する社員に身元保証書を提出させる際には、以下3点に注意して身元保証書を作成しましょう。

  • 身元保証を規制する法律
  • 身元保証法の内容
  • 身元保証人の責任の範囲

身元保証を規制する法律

先述の通り、身元保証書の提出を義務付けている法律はありません。ただし、内容については昭和8年10月1日に施行された「身元保証に関する法律(以下、身元保証法)」によって規制されています。

身元保証法は身元保証人の保護を主な目的としていて、身元保証書の提出を求めるときには、この法律を遵守することが必要です。

身元保証法の内容

身元保証法の第1条では、身元保証の期間を原則として3年、期間を定める場合も最長で5年と規定しています。

また第3条では、労働者が業務上不適任、もしくは不誠実であるために、身元保証人に責任が生じる可能性があることを会社が知った場合や、勤務内容が大きく変更するなど、責任が加重されるおそれがあることを知った場合には、直ちに身元保証人に通知しなければならないと規定しています。

そして第4条で、身元保証人がこれらの通知を受けた場合には、身元保証契約を解除できると定められています。

身元保証人の責任の範囲

従業員の業務上における管理や監督の義務は、身元保証人ではなく会社にあります。

そのため、本人の故意または重大な過失があるケースを除いて、保証人に損害賠償を求めることは難しいはずです。

また、身元保証法の第5条には、「裁判所は身元保証契約における損害賠償の責任およびその金額を定める際には、以下の事情を斟酌して決定するもの」とされています。

  • 被用者(従業員)の監督に関する使用者(会社)の過失の有無について身元保証人が、身元保証をするに至った理由と身元保証をするときにした注意の程度
  • 被用者(従業員)の任務または身上の変化
  • その他一切の事情

したがって、裁判所によって認定される損害額は、上記の身元保証法第5条に記載された事情が考慮され、実際に発生した損害額から一定額減額されるのが一般的です。

そのため、会社が身元保証書に基づいて、身元保証人に対して損害賠償を請求できる金額は、ケースによって異なります。

(Tips)2020年4月から身元保証書には損害賠償の上限額の記載が義務付けられました

2020年4月に民法第465条の2が改正され、身元保証人に対して請求できる損害賠償の上限額(極度額)を定める必要が生じました。上限額が定められていない身元保証書は無効となります。

そのため、2020年4月以降に従業員へ提出を求める身元保証書には、損害賠償の上限額を記載しなければなりません。

ただし、改正民法附則第21条1項には、経過措置として、2020年4月の施行日前に締結された身元保証契約については、改正前の民法の規定が適用されるとしています。

参考:法務省「2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります」

身元保証書のチェックポイント

ここでは身元保証書を作成する上で、記載が必要な項目をまとめています。ぜひ参考にしてみてください。

  • 保証期間が定められているかどうか:期間が定められていない場合には3年となります
  • 保証期間が5年を越えていないかどうか:5年を超える期間を定めることは違法です
  • 損害賠償の上限額(極度額)が記載されているかどうか

身元保証書のサンプル

納得して身元保証書を提出してもらうためのポイント

身元保証書の内容には損害賠償に関わる記述があることから、父母以外に保証人をお願いすることは簡単ではありません。

家族の事情により、身元保証人を頼める親族がいない場合には、身元保証書の提出に対して抵抗を感じることがあるかもしれません。

さらに、日本の企業では身元保証書の提出を求めることは多くありますが、外資企業では身元保証書の提出を求めることが少ない場合も。そのため、外資企業からの転職者や外国籍の人を採用する際には、提出を懸念される可能性があります。

採用した社員に納得して身元保証書を提出してもらうためには、以下2つのポイントに注意しましょう。

  • 身元保証書の目的や保証人の責任の範囲、期間などを説明する
  • 就業規則や雇用契約書に身元保証書の提出の義務を明記する

それぞれを解説していきます。

身元保証書の目的や保証人の責任の範囲、期間などを説明

身元保証書を提出することに対する従業員の疑問や不安を解消するために、人事担当者は身元保証書の目的や保証人の責任の範囲、期間などについて、丁寧に説明する必要があります。

特に、損害賠償については本人の故意や重大な過失があった場合に賠償を求めることや、損害賠償の上限額やその根拠などについても説明しましょう。

就業規則や雇用契約書に身元保証書の提出の義務を明記

労働基準法などの法律では、身元保証書について規定されていないため、採用された人が身元保証書の提出を拒否できます。

一方で、企業には採用の自由があるため、身元保証書を提出しないことを理由に採用を見送ることが可能です。

しかし、この場合には就業規則や雇用契約書に、「身元保証書を提出する必要がある」ことに加えて、「提出しない場合、採用を拒否する場合がある」と明記しなければなりません。

身元保証書の目的や内容をしっかりと説明することが重要

この記事では身元保証書の目的や、納得して提出してもらうポイントについて解説しました。

身元保証書には会社に損害を与えてしまった場合の保証人の責任や、賠償額について記載されています。そのため、身元保証書を提出する従業員にも、身元保証人になる人にもとっても少なからず抵抗を感じるものです。

したがって、入社する社員に納得して提出してもらうためには、人事担当者が身元保証書の目的や内容についてしっかりと説明することが大切です。

さらに、身元保証書には記載すべき項目があるので、事前に確認するようにしましょう。

人事ZINE 編集部

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