HRtechで新卒採用はどう変わる?HRtech導入前に企業が見直すべき課題

皆さんは、HRtechという言葉をご存知でしょうか?

HRtechとは、人事を意味する「HR:Human Resources」と、技術を意味する「Technology」を組み合わせた造語であり、クラウド・SNS・AI・ビッグデータ・モバイルなどの技術を活用し、人と組織のパフォーマンスを最大化することの総称のことを指します。

「HRtechの活用によるIT技術と人事業務の融合」によって業務の効率化を図ることができるとされています。

今回は、昨今注目を集めてきているHRtechで新卒採用がどのように変わるのか、また、HRtechの導入にあたって企業が抱えている課題について、新卒採用アドバイザーの小野さんにお話をお伺いしてきました。

「人材の適材適所」を考えるうえで「HRtech」は大きな役割を果たす

人事ZINE編集部
ーー新卒採用に「HRtech」を導入する目的にはどのようなものがあるのでしょうか?

小野さん
「AIやデータ分析を活用した人材の適材適所化」ですね。

現在、少子高齢化が進み、人材不足が嘆かれている中で、これまでの採用活動のスタイルにはなかった、「ミスマッチの可能性を下げること」「自社で長期的に活躍できる人材を採用すること」が重要視されるようになってきました。

これまで、社内の人材配置や人材採用における要件定義などはAIやデータ分析とは無関係と思われていました。しかし、昨今はAIや分析能力の上昇により適性検査から導き出す適切な人材配置や、現社員へのストレスチェックから導き出す退職予測などができるようになっています。

AIやデータ分析を行うことでより効果的な配置・採用などが行えるようになってきているのです。

「これまでの採用スタイル」から抜け出せないことが、多くの企業が抱える大きな課題となっている

人事ZINE編集部
――「人材の適材適所を考えるうえで企業が抱えている課題」としてはどのようなものが考えられますでしょうか?

小野さん
やはり、これまでの採用スタイルが根強く残ってしまっていることが、大きな課題ではないでしょうか。例えば、

  • 一括で応募者を集めてふるい落とす
  • 立ち居振る舞いや学歴など、表面的な部分だけを評価する

など、これまでは、応募者の本質を見極めることはできず、採用担当者の経験や勘のみに頼った採用スタイルが主流でした。しかし、それではミスマッチが起こるだけでなく、「その応募者にとって、どのような働き方や配置が適しているのか」が明確化できません。

とはいえ、人事業務の幅広さゆえに採用活動のクオリティ向上まで手が回らず、企業によっては採用活動そのものがルーティン化してしまい、これまでの採用スタイルから抜け出せないといった負のスパイラルにはまってしまっているのだと考えられます。

HRtechはそのスパイラルから抜け出すための手段でもあります。

HRtechの導入で「応募者の本質を見極める」採用スタイルに変わる|数年で変化を実感できることもある

人事ZINE編集部
――HRtechを導入することで、新卒採用は具体的にどう変わるのでしょうか?

小野さん
HRtechを導入することで変わる点の一つは、上述した「採用スタイル」です。

例えば、応募者にあらかじめ適性検査を行ってもらったデータをクラウドで管理し、応募者の持つ特性から、「本質的にマッチした企業」をピックアップして「オススメ企業」や「企業からのオファー」として連絡するサービスなどが出てきています。

それによって、学歴などの表面的な情報に捉われない「応募者の本質を見極める」採用スタイルへの切り替えが現実味を帯びてきていることも事実です。

――実際に変化を実感できている企業も多いということでしょうか?

小野さん
そうですね。企業によっては、「HRtech導入後、数年で変化を実感できた」ということもあるようです。

実際に聞いた話ですと、

  • 学歴に捉われずに判断できるようになった
  • 内定受諾率が上がった
  • 人材の定着率が上がった

などの変化を実感している声があがってきており、企業にとって本当に必要な人材が見えるようになったことで、採用判断が容易になったのだろうと考えられます。

HRtechは中小企業だからこそ取り入れるべき|先入観を無くした取り組みを

人事ZINE編集部
――現状、HRtechを導入していない企業もあると思うのですが、やはり企業によっては抵抗を感じているのでしょうか?

小野さん
抵抗を感じているというよりは、「HRtechは大手企業や技術的に進んでいる企業がやるもの」というイメージを持っている企業が多いのだと思います。実際、成功例の多くは採用人数の多い大手企業ですので、「活用のイメージがわかない」と感じている中小企業も多いのも無理はありません。

しかし、採用人数の少ない中小企業だからこそ、「本当に必要な人材」を見極めなければ、長期的に活躍できる人材の採用は難しいものです。

例えば、10人の採用枠に対して11人の応募しかなかった場合、「誰を採用するか」というよりは「誰を落とすか」という考え方にシフトしてしまいます。そうなると、学歴などの表面的な部分を比較するしか判断出来る要素がなく、結果としてミスマッチが起こります。

ですので、採用人数が少ない中小企業だからこそ、HRtechを活用した採用が今後必要になってくるのではないかと思います。「大手企業や技術的に進んだ企業がやるもの」という先入観をなくした取り組みをしていってもらいたいですね。

HRtechを導入するなら、まずは「人材管理システム」で社内環境を見直す必要がある|適性検査の活用でも代用可能

人事ZINE編集部
ーーHRtechという言葉が示す範囲が広く、どこから始めればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか?

小野さん
確かにそれはあると思います。注目を集めている分新規参入業者も多く、サービスの数も年々増えてきているのが実情です。

まず、HRtechには現在大きく分けて以下のカテゴリがあります。

  • 求人(人材紹介、ソーシャルリクルーティング、ダイレクトリクルーティングなど)
  • 採用(採用管理、採用広報、スキル測定など)
  • エンゲージメント(人材育成・開発、社内コミュニケーションなど)
  • 労務管理(勤怠・給与管理など)
  • People Analytics(人事可視化・分析ツール)
  • アルムナイ(企業の離職者やOB・OG
  • HCM

それぞれサービスの一例を以下の表にまとめました。

カテゴリ代表的なサービス特徴

求人
(下位カテゴリが多いため、ダイレクトリクルーティングに限定)
【中途】BIZREACH
(https://www.bizreach.jp/)

【新卒】OfferBox
(https://offerbox.jp/)
ダイレクトリクルーティングサービスは、求職者がプロフィールを通して企業にアピールし、それに対して企業がオファーを出す、マッチング重視の求人サービス。
採用リクナビHRtech採用管理
(https://hrtech.rikunabi.com/ats/)
シンプルな操作感で、応募者の情報や選考状況が確認できる。
過去の選考データの分析が可能で、採用業務をより効率化できる。
エンゲージメントモチベーションクラウド
(https://www.motivation-cloud.com/)
独自の検査項目により、組織状態を分析し、組織改善に利用することが可能。
部署ごとの導入もできる。
労務管理SmartHR
(https://smarthr.jp/)
入退社や、保険手続きなどをシステム上で管理し、労務の一元化・効率化が可能。
People AnelyticsMITERAS 仕事可視化
(https://www.persol-pt.co.jp/miteras/work-visible/)
誰がいつどのような仕事をしているかを可視化することによって、サービス残業による長時間労働や勤務の不透明化を防止することが可能。
アルムナイ
エアリーforアルムナイ
(https://airy.net/alumni/)
退職者(OB/OG)専用アプリ。復職意思の確認や、現住所・就職状態をもとに、求人の紹介が可能。
HCM(ヒューマンキャピタルマネジメント)
Workday ヒューマン キャピタル マネジメント
(https://www.workday.com/ja-jp/applications/human-capital-management.html)
人財配置から報酬、キャリアの向上まで従業員のライフサイクルを完全に管理することが可能。

この中でも採用に大きくかかわってくるのは、「求人」「採用」「エンゲージメント」の3カテゴリなのですが、採用のことを考えるあまり、「採用系のHRtech」をいきなり導入するのは得策ではありません。

何故なら、仮に採用が効率化できたとしても、人材の定着ができなければ本当の意味で「採用が成功した」とは言えないからです。

ですので、HRtechの導入にあえて優先順位を付けるのであれば、1位は「エンゲージメント」となります。

エンゲージメントとは、適性検査やストレスチェックを通して、各社員に適した人材配置などを導き出すものです。社内の状態や課題を把握できれば、対策も練りやすく「現場にとって必要な人材」を把握することが出来るようになるでしょう。

新しい人材を採用する前に、まずは社内での「人材の適材適所」を実現する必要があるのです。

ーーHRtechの導入予算がない場合に出来ることはあるのでしょうか? 

小野さん
予算感が合わないといった場合には、「適性検査」を活用してみることをオススメします。

適性検査の一例を挙げますと、

  • 株式会社リクルートが提供する「SPI3
  • 日本エス・エイチ・エル株式会社の「玉手箱III
  • 株式会社イー・ファルコン社の「eF-1G

が挙げられます。「学生が使うもの」という印象ですが、企業内で使用することも可能です。適性検査を行う際は紙媒体でも良いのですが、WEB上で管理できるものであれば、データの管理がしやすいのでオススメです。

実際、HRtechが注目される前には適性検査を使って採用活動を行う企業もありました。

具体例としましては、各部署で活躍している社員に適性検査を行い、その結果に近い応募者を採用する方法が挙げられます。新卒採用では「スキルや経験」を見て採用を判断するのは難しいので、応募者の内面にフォーカスして採用を考えていく必要があります。

適性検査を行えば、社内で「人材の適材適所」を考える際の参考にもなるため、やっておいて損はないと言えますね。

HRtechの発展と共に、これまでの採用スタイルでは採用活動そのものが厳しくなっていく|今後を見据えた取り組みをしてもらいたい

人事ZINE編集部
ーーHRtechの発展を通じて、新卒採用は今後どのように変化していくと思いますか?

小野さん
少子高齢化によって、応募者がさらに減少していけば、従来のように「一括で大量に集めてふるい落とす」採用スタイル・「ふるまいや学歴など、表面的な部分だけを評価する」採用スタイルをやっている企業は今後ますます厳しくなっていくと思います。

ですので、HRtechの発展を通して、企業も「応募者一人一人に向き合った採用スタイル」に切り替えていくことの必要性を感じ、今後を見据えた取り組みをしていただけたら、と思います。

最後に

今回は新卒採用アドバイザーの小野さんに、昨今注目を集めてきているHRtechで新卒採用がどのように変わるのか、また、HRtechの導入にあたって企業が抱えている課題についてお答えいただきました。

新卒採用は、少子高齢化による働き手の減少によって、今後更なる変化を求められるようになるでしょう。

現在、HRtech関連のサービスは数多くあるため、「どれから手を付ければいいのか…」と悩まれている方も少なくありません。

今回紹介した「人材管理システム」や「適性検査の活用」を通して、社内環境を見直したり、長期的に活躍できる人材を改めてブラッシュアップするところから始めてみてはいかがでしょうか。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部