コンプライアンスとガバナンスとは?違いや関係、定義も解説!

企業不祥事などを背景に、ビジネスの現場では「コンプライアンス」と「ガバナンス」という言葉を耳にすることが多いと思いますが、なんとなくわかっていても、正確な意味を知らない人事担当者もいるのではないでしょうか?

相次ぐ企業不祥事の背景から、企業はガバナンス体制の整備を強く求められているなか、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識が欠落すると、企業にとって重大な不祥事を引き起こすこともあります。

ここでは、「コンプライアンス」と「ガバナンス」のそれぞれの意味や両者の違いなどについて説明するとともに、従業員に教育をしていくポイントも解説します。

コンプライアンスとガバナンスとは?

「コンプライアンス」と「ガバナンス」のそれぞれの用語の意味や違い、重視される背景について、説明します。

コンプライアンスとは

コンプライアンス(compliance)とは、和訳すると「要求、命令などに応じること」となりますが、ビジネスにおいては法令遵守の意味となり、法令だけにとどまらず、倫理や規範など法令以外の範囲も含まれます。

ガバナンスとは

「ガバナンス(governance)」とは、統治を意味しますが、ビジネスでは「コーポレート・ガバナンス」を指し、企業統治、いわゆる企業の管理体制をいいます。

コンプライアンスとガバナンスの違いや関係性

それぞれの定義は前述しましたが、「コンプライアンス」は、法令や規則、規範などを遵守すること、「ガバナンス」は、コンプライアンスを守る企業内部の管理体制をいいます。

このように、コンプライアンスはガバナンスに包括される関係にあります。

コンプライアンスが重視される背景

コンプライアンスが重視されるきっかけとなった、企業の不祥事やそれを受けた法改正の内容を次のとおり説明いたします。

相次いだ企業の不祥事

2000年代初頭から、日本国内で自動車メーカーのリコール隠し、食品会社による牛肉産地偽装、鉄道会社による有価証券報告書の虚偽記載など企業不祥事が相次ぎましたが、これらは、企業関係者による倫理を逸脱した行為が大半です。

度重なる企業不祥事を背景に、2004年に制定された公益通報者保護法では、不正を通報した従業員を保護する公益通報者保護制度が導入され、2005年に制定された会社法では、内部統制システムの構築義務が大会社(※)に課せられました。


会社法における大会社とは、資本金5億円以上、または負債総額200億円以上を指します。大会社以外は義務付けされていませんが、内部統制システムの構築を怠った場合は、取締役の善管注意義務に違反することとなります。

第一法規株式会社「企業法務の基礎Q&A」

このように、相次いだ企業の不祥事によって、コンプライアンス体制整備が企業に対して強く求められるようになったのです。

ガバナンスが重視される背景

ガバナンスが重視されるきっかけとなった、アメリカや日本における財務報告の企業不祥事や、それを受けた法改正の内容を説明します。

相次いだ会計不祥事アメリカでは、2001年から2002年にかけ、大手企業による会計不祥事が立て続きましたが、両社はいずれも同一監査法人が不正に関与していました。

一方で、日本においては、2004年に大手企業による粉飾決算などの会計不祥事が起きていますが、これらの事件は、株式市場全体の信頼を大きく低下させました。

これを機に、アメリカでは2002年にサーベンス・オクスリー法(いわゆるSOX法)を制定し、日本では2006年に金融商品取引法を改正していますが、いずれも上場企業の会計不祥事防止を目的として、ガバナンスを強化するための財務報告に関わる内部統制報告制度を法制化しています。

なお、2005年に制定された会社法で、大会社には内部統制システム構築義務が課せられていることは前述したとおりです。

・内部統制報告制度

前述のとおり、金融商品取引法により法制化された内部統制報告制度は、上場会社を対象に、適正な財務報告の確保のため、必要な体制(内部統制)について評価した報告書を提出することが義務付けしています。

〇金融商品取引法に基づく内部統制報告制度の概要

上場会社は、
- 事業年度ごとに
- 当該会社の属する企業集団及び当該会社の
- 財務計算に関する書類その他の情報(財務報告)の
- 適正性を確保するために必要な体制(内部統制)について
- 評価した報告書(内部統制報告書)を
- 有価証券報告書と併せて提出

○ 内部統制報告書には、公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない
○ 内部統制報告書は、提出日から5年間公衆縦覧

金融庁「金融商品取引法に基づく内部統制報 告制度の概要」

この内部統制への取り組みとして、上場企業はガバナンス体制を構築するため、不正行為の防止、業務のミス防止や効率化を図る仕組みを講じています。

従業員に教育するポイント

「ガバナンス」と「コンプライアンス」のそれぞれ従業員に教育すべきポイントを説明します。

ガバナンスの従業員教育

ガバナンスは全企業で必要か?

金融商品取引法上の内部統制報告制度は上場企業が対象になっているため、内部統制報告制度に応じたガバナンス体制は上場企業は必須ですが、非上場企業は義務化されていません。

他方、会社法における内部統制構築義務は、前述のとおり大会社が対象であるものの、企業規模に拘わらず内部統制構築を怠った場合は取締役の善管注意義務違反にあたります。

そのため、信頼性向上の観点から、内部統制に関する制度の対象企業でなくても、内部統制に関する制度に応じたガバナンスに取り組むことが望ましいといえます。

教育のポイント

内部統制に関する制度においては、不正行為や業務のミス防止のため、リスク管理体制を構築・維持することが求められています。

そのため、企業の信頼性を高めるためのポイントとして、この「リスク管理」を従業員に教育をすることが有効です。これにより、不正行為や業務のミスが起こりうる状況にならないように、リスク管理を意識して業務体制を構築・維持することを従業員に意識づけすることが可能です。

リスク管理とは、例えば次のような不正やミス防止の仕組みを講じることです。

  • 金銭に関する業務はひとりの担当者に任せず、上司などのチェックを必ず入れる
  • 間違い防止の観点から、データ入力の二重インプットを避ける
  • 間違えるリスクのある業務は、間違えない仕組みを講じる、チェックをいれる

内部統制報告制度におけるリスクの洗い出し方法

内部統制報告制度では、次のようなツールでリスクを洗い出し、管理体制を整えています、

これにより、不正防止や業務ミスのリスクを洗い出すことが可能となるほか、業務の効率化を図るための検討にも活用できます。制度対象外の企業でも、とくにリスク管理が必要な業務は参考にするように教育することが有効です。

リスクの洗い出し

リスク洗い出しの手法として、「内部統制3点セット」があげられます。

①フローチャート

業務の流れをわかりやすく図式化したものです。

②業務記述書

業務の内容や手順をわかりやすく記載したものです。

③リスクコントロールマトリックス

業務毎のリスクの内容やリスクに対する統制の内容を記したものです。

(金融庁 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並び に財務報告に係る内部統制の評価及び監査」)

コンプライアンスの従業員教育

企業不祥事によって当該企業は、社会的信用の失墜、売上の減少、取引停止、資金調達難、人材確保難のようなことが起き、これがまた売上減少につながるような負のスパイラルに陥ることが考えられます。

企業不祥事によって失った信用は、容易に取り戻すことはできませんので、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めることが必要です。

教育のポイント

従業員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるためには、従業員に企業行動規範を示すことが有効です。

すでに、内部統制体制の取り組みとして定めている企業が多いと思われますが、企業行動規範を定めていない企業においては、ぜひ、企業行動規範を定めることを検討してみてください。

コンプライアンス意識を高めるためには、従業員に対する定期的な教育も必要となります。

教育テーマは、企業行動規範の内容や前述の解説を参考にするほか、コンプライアンスに関する事例から法律の解説をすることが考えられます。また、事例ビデオを用いて、グループワークを実施するなども有効です。

コンプライアンス教育担当者を決め、全従業員を対象に四半期に一回など定期的にコンプライアンス研修を行うよう計画化することがコンプライアンスを浸透させるポイントになります。

コンプライアンス・ガバナンス強化が会社や自身を守ることになることを従業員に教育しましょう!

本記事では、コンプライアンスとガバナンスの違いや目的、体制を整えるための手順を整理し、この体制を整えることで会社不祥事を防ぐほか、業務のミス防止や効率性を高めることができることなど、ガバナンスとコンプライアンスの重要性をお伝えしました。

近年、調達取引先まで含めたサプライチェーン全体でCSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)を果たすため、企業の取引において特にコンプライアンス体制が重視されていますが、コンプライアンス体制を整えるには、本記事でふれた「企業行動規範」の策定が不可欠です。

ガバナンスやコンプライアンス体制を整えることによって、会社や従業員自身を守ることに直結することを従業員一人ひとりに理解してもらい、まずは「企業行動規範」を策定することから始めて、従業員教育を進めてみてください。

人事ZINE 編集部

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