コンプライアンス教育を社内で進めるには?資料作成方法などを解説!

コンプライアンス研修資料を作るといっても「どのようなことをテーマにすればいいの?」「資料の構成は?」「従業員に興味を持ってもらうには?」など、どのように作れば良いのか、頭を抱えている人事担当者もいるのではないでしょうか?

相次ぐ企業不祥事の背景から、企業はとくにコンプライアンスの強化が求められていますが、従業員一人ひとりのコンプライアンス遵守の意識を高めることが重要です。

ここでは、コンプライアンス教育の目的やテーマの決め方、一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるための資料の作り方などを説明します。

コンプライアンス教育の必要性

コンプライアンス教育はなぜ必要か、その背景と教育の目的を説明します。

コンプライアンス教育が必要な背景

牛肉の産地偽装や個人情報流出、粉飾決算など企業不祥事が相次いでいますが、企業は一度信頼を失うと信頼を回復することは困難です。

「自社ではそんなこと起こり得ない」と思われる人事担当者もいるかもしれませんが、コンプライアンス体制を整えていないと従業員が意図せずとも道を踏み外すこともあるほか、整えていないことに企業の責任を問われることもあります。

このようななか、近年、CSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)の意識の高まりから、企業はサプライチェーン全体でコンプライアンスの取り組みを強化をし、年々、CSRの要請が高度化しています。

コンプライアンス教育の目的

企業不祥事の背景には、コンプライアンス意識の低下があげられます。

たとえば、牛肉産地偽装事件では、BSE問題の最中、スタッフが安価な外国産牛肉を国産牛肉のパッケージに詰め替えたことを内部告発によって関係者が逮捕されるほか、その食品会社は廃業を余儀なくされました。

このような一部の社員のコンプライアンス意識の低下で、企業が廃業に追い込まれることもあります。

そのため、コンプライアンスの体制強化には、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識を高め、コンプライアンス行動を実践してもらうため、教育が必要です。

教育の前にすべきこと

コンプライアンス教育は、闇雲におこなっても、従業員の一人ひとりの意識を高めることはできません。

ここでは、コンプライアンス教育の前に行っておくこととして、自社のコンプライアンス指針となる企業行動規範の策定や教育体制の構築について説明します。

企業行動規範の策定

企業行動規範とは、自社の従業員が業務遂行するにあたって判断の拠り所となる指針であり、コンプライアンスの指針となります。たとえば、「差別のない企業風土づくり」の項目に対して、行動規範としては「差別やハラスメントを行わない」というような指針です。

企業行動規範では、「法令遵守」「人権の尊重」「環境への対応」「取引先への対応」「地域との共存」などの項目をあげていることが多くあります。

これらの企業行動規範を定めることで、自社のコンプライアンス教育の目標を定めることができるのです。

企業行動規範の策定については、コンプライアンスとガバナンスとは?違いや関係、定義も解説!の記事で説明していますので、参考にしてください。

教育体制の構築

小規模であれば、人事担当者がコンプライアンス教育を実施することで対応できます。

ただし、ある程度の企業規模となると、教育責任者や事業所毎のコンプライアンス教育担当者の任命、教育担当者への研修会実施などコンプライアンス教育体制が必要となります。

そのうえで、コンプライアンスの定期研修として、四半期毎にコンプライアンス教育担当者より教育を実施と報告をさせる、振り返りを実施の上、次年度のコンプライアンス研修テーマを設定するなど、PDCAサイクルを回していくことで効果的なコンプライアンス教育を実施することができます。

コンプライアンス教育テーマの種類

コンプライアンス教育テーマは、自社のコンプライアンス指針として策定した「企業行動規範のテーマ」と「業務に関する法律テーマ」の双方から設定するように行うと、自社の方針やニーズに沿った研修を実施することができます。

企業行動規範のテーマ

企業行動規範は、従業員の判断の拠り所となる指針ですので、従業員が判断に迷ったときに行動につなげやすいよう、テーマを選定する必要があります。

先にふれた企業行動規範の例では、「法令遵守」「人権の尊重」「取引先への対応」が主に対象になります。

東京商工会議所の企業行動規の場合を例にあげると、「人権の尊重」には次のように記載されています。

〇人権の尊重(東京商工会議所 企業行動規範抜粋)
各人の人権を尊重するとともに、人種・民族・宗教・国籍・社会的身分・性別・年齢・障がいの有無などによる差別を排除する。

東京商工会議所「企業行動規範」

たとえば、人権尊重の項目からテーマを決める場合、障害者雇用が社会情勢的に話題になっていたら、障害者に対する差別防止をテーマにあげるなど、都度、テーマを設定します。

業務に関する法律テーマ

法律が関係する日々の業務は多々ありますが、法律の定めを改めて啓蒙したいテーマや、リスクが生じやすいテーマを取り上げることが考えられます。

たとえば、顧客へのダイレクトメールの送信をする業務について、個人情報保護法のテーマを取り上げるというように、業務に直結したテーマを取り上げます。

また、業務に直結する法律テーマで取り上げてほしい内容についてアンケートを実施することなども有効です。

コンプライアンス教育資料の作成方法

決定した研修テーマに基づき研修資料を作成していきますが、ここでは情報収集から事例の選定、資料の具体的な作成方法などを説明します。

情報収集

企業行動規範のテーマの場合

法令違反や倫理違反事例などを集めます。直近の話題性の高いニュースなどを取り上げると、従業員は興味を持って取り組んでもらえますので効果的です。

また、人権テーマであれば、法務省で研修資料の小冊子や動画も無料で公開していますので、参考にしてください。

法務省:企業における人権研修~企業の人権研修担当の方々へ~

業務に関する法律テーマの場合

各省庁の法律の説明資料を入手します。

たとえば、労働法関係ならば厚生労働省に法律の関係リーフレットや、わかりやすい解説など公開していますので、ぜひ活用してください。

なお、各省庁のウェブサイトの情報は、出典の記載、第三者の権利の侵害をしないなどの一定条件の下、自由に利用できることが一般的ですが、利用する場合は、必ず各省庁のサイトの条件を確認することが必要です。

その各サイトの条件の下、解説のうちポイントとなる事項を引用や参考にし、法律の概要を解説します。資料の構成によっては、法律の解説部分は各省庁のリーフレットを添付するなど、状況に応じて対応してください。

また、教育資料の構成によっては、法律の目的や定義を掲載するなど法律の原文を記すことが望ましいケースもありますので、政府が提供しているポータルサイトで法令検索ができるe-Gov法令検索も必要に応じて活用してください。

教育資料の構成方法

教育資料を作成するため、どのような順序で説明してしいくかを決める必要がありますが、文章の基本構成である「三部構成」が研修資料でも使われています。

ここでは、三部構成を用いた資料構成方法を解説します。

三部構成とは

「導入」「本題」「まとめ」の三部構成を大枠として構成します。

教育資料に必要な項目のベースを三部構成で一覧にしますので参考にしてください。

◯教育資料の三部構成一覧

導入

・本教育研修の目的
・統計情報(例えば、個人情報流出件数や流出原因の割合など)などを用いた導入文章
・必要に応じて統計のグラフなどの掲載

本題

「事例の説明」
・テーマに関連した事件や事例をニュース記事の引用等による事例の説明
・実際にどのようなことが原因で事件になったのか、経緯や登場人物の相関関係などの解説

「事例の解説」
・可能であれば事例に対するグループワークの実施
・事例に対する未然防止策や事後対応などの解説

「法律の説明」
・各省庁等のリーフレットなどを引用・参考のうえで解説
※メモを書き込めるように余白をとっておくと、受講者が後で見返すときに使い易くなります。

まとめ

・行動につなげるための心構えやヒントなどのまとめ
・可能であれば、受講者による今後の行動に対するコミット

つぎに、三部構成で具体的に資料を作成する流れを説明します。

例として「個人情報保護法」をテーマとして取り上げた場合の構成イメージを記しますので参考にしてください。

「導入」では、興味を引くためにテーマに関連した事件や事故などの統計情報をふれることで、リスクや影響を認知してもらうことができますので、可能な限り統計情報を入手して導入でふれてください。

また、導入で「本教育の目的」を示すことで、教育を受ける従業員は、コンプライアンス教育のゴールを意識して受講できますので、ぜひ、目的も導入に盛り込んでください。

「本題」では、さらに細分化して「事例の説明」「事例の解説」「法律の説明」とすることが考えられます。内容によっては、構成を変更する必要がありますが、ここでは基本形としてお伝えします。

「事例の説明」では事例として、統計的に多かった原因の事件や自社であり得る原因であった事件などをピックアップし、事件の概要を事例として説明します。

なお、事例として事件のニュース記事を引用することが考えられますが、二次利用の制限や著作権の取り扱いなとに留意してください。

「事例の解説」では、事例に対して「何が原因であったのか」「問題点や対応策」などをグループワークを実施する資料構成にすると、自分で考えるプロセスが入りますので記憶が定着するメリットがあります。

そのため、可能な限りグループワークを取り入れてください。

そのうえで、取り上げた事例について「事例の何が悪かったのか」「どうすれば良かったのか」などの疑問に対して解説をします。

「法律の説明」では、事例の解説後に、法律の説明をすることで体系的な理解ができます。

法律の解説は、各省庁などに分かりやすい解説がされた資料がありますので、引用するなどで法律の説明を盛り込みます。

「まとめ」では、本教育の目的をおさらいし、コンプライアンス向上に向けた行動につなげるための心構えやヒントなどを説明してまとめとします。

また、研修を通して、今後自身がとるべき対応や考え方などを発表してもらう、記入してもらうなどで、今後の行動へのコミットをしてもらうとさらに効果的です。

コンプライアンス教育体制を整え、効果的に従業員に教育しましょう!

コンプライアンス教育の必要性のほか、コンプライアンス教育を推進するには企業行動規範を定めてコンプライアンス教育の指針を定めておくことの重要性、興味を惹くコンプライアンス教育資料の構成方法を解説しました。

今後も、より一層CSRの要請が強まるなか、企業としてコンプライアンス体制の強化を図るとともに、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めていくことが企業としての重要な課題です。

本記事を参考に効果的なコンプライアンス教育資料をつくり、従業員に教育をしましょう。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部