コンピテンシーの例は? 項目例・具体例を紹介

「コンピテンシー評価の具体的な評価項目はどのように設定したら良いのだろう」「導入事例を参考にして自社に活かせるかも確認したい」と感じている人事担当者の方も多いのではないでしょうか?

2000年以降、高い成果に繋がる職務行動を評価する「コンピテンシー評価」を導入する企業が増えています。また、コンピテンシー評価の”概念”を取り入れた自社独自の評価基準を設定する企業も多く見られます。

しかし、コンピテンシー評価は、効果が認められている一方で、自社に合わせた評価項目や基準の設定が難しく導入のハードルが高いと言われています。では、実際に自社にコンピテンシー評価を導入するには、どのような手順で進めたら良いのでしょうか。

この記事では、コンピテンシー評価の必要性や項目例、導入方法や導入事例などを紹介していきます。

目次

コンピテンシー評価の目的と必要性

まず、コンピテンシー評価の内容や、コンピテンシー評価を導入する目的について、解説していきます。

コンピテンシー評価とは

コンピテンシーとは業務上の職務や役割において、高い業績を上げている社員に共通する行動特性のことです。ある業務で良い業績や高い成果を上げている人には、そのような成績を残せる理由があります。

この行動特性を基に社内での人事評価や人材育成、採用面接などの評価に活用するのがコンピテンシー評価です。

コンピテンシー評価制度導入の目的

コンピテンシー評価を導入する目的は以下3つが挙げられます。

人材育成の基準:
人事評価制度を人材育成の基準にすることで、社員それぞれに達成してほしい目標を明確にします。さらに、達成するために必要な教育の計画が立てやすくなります。

最適な配属:
人事評価制度によって、社員の能力や配属先での業績を客観的に判断できます。また、社員それぞれの強みと弱みを把握することで、最適な人員配置にもつなげることが可能です。

待遇の根拠:
待遇について年功序列だけでなく、成績や業績も含めて評価する場合、評価基準を明確にする必要があります。そのため、コンピテンシー評価を導入することで、待遇の根拠を示すことが可能です。

コンピテンシー評価のメリットとデメリット

続いて、コンピテンシー評価を導入した場合のメリットとデメリットを解説します。導入する場合には、それぞれをよく理解しておきましょう。

コンピテンシー評価のメリット

  • 公平性を高めることができること
  • 評価基準を明確にできること
  • 行動特性の把握により最適な人材配置ができること

コンピテンシー評価は成果だけでなく、「行動=プロセス」を評価するための公平性を高められます。そのため、評価される従業員の満足度アップに繋がるでしょう。また、評価基準が明確なため、努力が反映される評価ポイントを従業員が理解しやすく、モチベーションのアップや生産性の向上が見込めます。

さらに、評価の結果から社員それぞれの行動特性を把握することが可能です。よって、最適な人材の配置や戦略的な育成、能力開発に結びつきます。

コンピテンシー評価のデメリット

  • 時間や手間がかかること
  • コンピテンシーの設定が難しいこと
  • 定期的な修正が必要なこと

コンピテンシー評価を導入する際には、コンピテンシーの分析やモデルの設定など、導入までに時間や手間がかかることがデメリットとして挙げられます。また、コンピテンシー評価モデルを設定するためには、理想となる行動特性を抽出しなければなりません。

ただし、自社にあったコンピテンシーを設定するのが難しく、設定したコンピテンシーが誤っているケースも考えられます。加えて、コンピテンシー評価は評価基準や項目を細かく設定するため、環境が変化した場合にはコンピテンシーの修正を行う必要もあります。

コンピテンシー評価の導入方法

コンピテンシー評価を導入する際には、まずコンピテンシーの評価モデルとして目標とするモデルを設定する必要があります。

評価モデルは業種や職種によって、求められるパフォーマンスや成果が異なるため、定まった項目や評価基準がありません。大切なポイントは、それぞれの組織に適したコンピテンシー評価モデルを明確化して設定することです。

STEP1|コンピテンシー評価モデルの設定

コンピテンシー評価モデルを設定する際には、以下3つのパターンを用います。

  1. 自社でパフォーマンスが高い社員の行動特性を抽出して、評価モデルを作る実在型
  2. 企業が求める人物像に基づいて、評価モデルを作る理想型
  3. 理想型モデルと実在型モデルを融合させたハイブリッド型

パフォーマンスが高い社員の行動特性を他の社員が再現できない場合や、企業が求める人物像のレベルが高すぎて、モデルの設定が現実とかけ離れている場合も考えられます。

このような場合には、実在型と理想型のそれぞれの良い点を取り入れたハイブリッド型を用いるなど、自社の状況にあった現実的な評価モデルに修正する必要があるでしょう。

①理想型モデル

コンピテンシー評価において「理想型モデル」とは、企業が求める理想に近い人物像を設定するものです。その企業にとって適した人物像を作り上げ設定することとなります。

実在のモデルがいるわけではないので、あまりにも高い現実味のないモデルになる恐れがあります。その点は注意をしておきましょう。

重要なのは、現実的に達成可能な理想型モデルを設定することとなります。

②実在型モデル

「実在型モデル型」とは、社内に実在する人物をモデルとして設定するやり方です。

企業が求める理想に近い人物や、社内でも一目置かれているような人物をモデルとして採用することとなります。

実在型モデルを設定するメリットとしては、成果をあげる姿がイメージしやすい、評価の際に社員が納得できる場合が多いという点にあります。

③ハイブリッド型モデル

「ハイブリッド型モデル」は理想型モデルと実型モデルを融合させた形です。

ハイブリッド型モデルを設定すると、実在のモデルをより強化し理想に近い人物像を作り上げることができます。

実在モデルでコンピテンシーを設計し、そのモデルに理想像をプラスアルファしていくという流れで作ると作成しやすいです。

注意点としては、理想像をプラスしすぎないという点にあります。

実在モデルに、理想像をプラスしすぎると、あまりにもかけ離れすぎているモデルができ上がるためその点においては注意しましょう。

STEP2|パフォーマンスが高い社員へのインタビュー

実在型のコンピテンシー評価モデルを設定するためには、各部門でパフォーマンスが高い社員にインタビューを行うべきです。その際には、他の社員と異なる行動特性を細かく調べる必要があります。また、パフォーマンスが高い社員と一般的な社員を比較するために、一般的な社員にもインタビューを行って、行動特性を調べましょう。

インタビュー後は、パフォーマンスが高い社員における行動特性の中で、成果に結びついている理由を見極めます。そして、自社に適したコンピテンシー評価モデルを設定します。設定したコンピテンシー評価モデルは、企業理念や経営戦略に沿っているかどうかを経営層とすり合わせることも必要です。

STEP3|コンピテンシー項目の設定

コンピテンシー評価モデルを作成する際には、評価項目を定める必要があります。評価項目は、それぞれの組織の目標や特性によって異なるため定型のパターンはありません。

そのため、通常は「コンピテンシーディクショナリー」と呼ばれる項目分けを参考にしながら、各職務の評価モデルを設定します。「コンピテンシーディクショナリー」とは成果を上げるために必要な行動特性を抽出して分類したものです。

以下の表は「コンピテンシーディクショナリー」の領域と項目の例です。自社で設定する場合は参考にしてください。

【コンピテンシーディクショナリーの領域と項目の例】

領域 項目

達成とアクション

達成志向、秩序・品質、正確性への関心、イニシアチブ、情報収集

支援と人的サービス

対人理解、顧客支援志向

インパクトと影響力

インパクト、影響力、組織間隔、関係構築

マネジメント領域

他者育成、指導、チームワークと協力、チームリーダーシップ

認知領域

分析的思考、概念的思考、技術的・専門職的・管理的専門性

個人の効果性

自己管理、自信、柔軟性、組織コミットメント

上記表の項目は、自社の経営方針や目標などに合わせて修正する必要があります。実際に、それそれの職種で評価基準として機能しているかどうかを検証してみて、実際の業務に合わせて修正しましょう。

STEP4|評価項目や基準が適正かどうかをチェックして修正する

コンピテンシー評価は評価項目や基準を明確に定めて細分化しています。そのため、環境の変化に対応するのが難しいというデメリットも。

従って、企業の経営方針や経営目標が変われば、業務上で必要とされていた行動も変える必要があります。行動を変化させると、これまでモデルとしていた行動特性も修正しなければなりません。

コンピテンシー評価を導入した後は定期的に、評価項目や基準が適性であるかをチェックして、必要があれば修正することが重要です。

コンピテンシー評価導入の際、人事ZINEでは、以下のコンピテンシー評価基準作成シートもダウンロード可能ですので、ぜひご活用ください。

【サンプル】コンピテンシー評価基準作成シート
【サンプル】コンピテンシー評価基準作成シート
『コンピテンシー評価基準作成シート』は、その仕事で成果を上げるために必要な能力(スキル)や性格は何であるかを現場社員へヒアリングし、採用時の求める人物像の抽出や人事評価基準の策定に活用できます。

コンピテンシー項目の具体例

具体的にコンピテンシーの項目を設定する場合、どのようすると良いのでしょうか。ここでは、コンピテンシー項目の具体例を紹介します。

自己認知能力

仕事をする上で、自分の能力や言動を客観的に認知することは重要です。自身の行動が周囲にどのような影響を与えるかということを理解し、社会人として行動できる力はどのような場面でも必要となります。

そのため、思いやりや誠実さ、ビジネスマナーなどを項目として設定すると良いでしょう。

思いやりや誠実さ、ビジネスマナーは職種を問わず、すべての社員に必要な能力となります。

第一印象度、プレゼンテーション力

顧客から信頼されるビジネスパートナーを目指すためには、第一印象度やプレゼンテーション力が重要です。顧客の声に耳を傾け、顧客の課題を理解し問題を解決する力も必要となります。

初対面の相手に対しても好印象を与える言動も必要で、第一印象度やプレゼンテーション力は販売職や営業職など、顧客と接する機会が多い職種に求められます。

素直さ、目標達成への執着、チャレンジ精神

素直に外部のいうことを取り入れる力や目標達成への執着力、チャレンジ精神も非常に重要な項目となります。

アドバイスや人の意見を取り入れなければ、成長の妨げとなる恐れがあります。また、目標達成の執着心がなければ、いくら素晴らしい目標を作り上げたとしても達成することは難しいでしょう。

企業が成長するためには、新たなことをチャレンジする能力も必要となります。

これらの項目は、職種や役割を問わず全従業員に求められるコンピテンシーとなります。

組織力、チームワーク

仕事をする上で組織として行動する力やチームワークは非常に重要です。

そのため、これらの項目もコンピテンシーに加えた方良いでしょう。

チームとして業務を行う上で、目標達成力を高めるムードメーカー的な人物や、自分の意思を相手に伝えるコミュニケーション能力なども必要となります。一つのプロジェクトに対してチームとして業務を行う場合などは、組織力やチームワークをコンピテンシーの項目に設定した方が良いでしょう。

業務遂行力

計画性や安定運用などの業務遂行力も重要な項目の一つです。

仕事をする上で業界トップレベルの知識を保有する人物や、迅速かつ適切に業務を遂行することのできる人物は重宝されるでしょう。

そのため、業務遂行力は主に管理職に求められる能力となります。業務遂行力の中には、適切な文章を書くことができる文章力、優先度を考えた上で業務を遂行する計画性、業務を理解した上で安定して運用する安定運用などがあります。

戦略志向

問題を分析して原因を追及することができる、問題解決のために具体的な手段を導き出すことができるという戦略志向は重要です。

そのため、戦略志向もコンピテンシー項目に加えた方が良いでしょう。戦略志向は特にクリエイティブな職種や企画・提案職に求められるコンピテンシーです。

戦略志向の中には、問題の本質を見極めて問題解決を行う分析思考や、客観的な視点で問題解決への道筋を立てる論理的思考などがあります。

また、新しい発想で業務の効率化を考えるアイデア思考などもあります。

情報収集力、情報整理力

情報を収集する力や整理する力も、仕事をする上で欠かせません。情報収集力や情報整理力は、管理職や幹部候補の従業員に多く求められるコンピテンシーとなります。

情報収集力とは多くの情報源の中から正しい情報を素早く収集する力です。また、情報整理力とは収集した情報を目的に応じて整理することのできる力となります。

指示・統率力

チーム全体で業務を行う場合、指示・統率力というのも重要になります。管理職やリーダーシップが必要となる職種に求められることの多いコンピテンシー項目です。

指示・統率力の中には、メンバーの能力により適切な業務配分を行う業務管理力や、規則やルールなどを設定しそれを守らせる指示力などがあります。

コンピテンシーを活用する場面

コンピテンシーを活用する場面はどのようになるのでしょうか。ここでは、コンピテンシーを活用する場面について解説します。

評価制度として活用する

コンピテンシーモデルの活用方法として一般的なのが、人事評価制度への活用です。コンピテンシーモデルの設定により、上司の主観ではなく、基準に基づいた人事評価をすることができます。

面接・採用の際に活用する

コンピテンシーは採用や面接の場面でも活用することができます。コンピテンシーを面接に取り入れれば、応募者の「思考」を把握することが可能になります。

「最も成果を上げたエピソードをお聞かせください」「なぜそのような行動をしたのですか」など、具体的な成果や行動について質問することで、応募者の志向を把握することが可能です。

能力やキャリア開発として活用する

コンピテンシー研修を開催すれば、従業員の能力開発やキャリア開発にも役立ちます。「どのような行動ができるようになりたいか」「どのような思考を身につけたいか」といった目標を、参加者一人一人が設定することにより従業員の成長に繋がります。

コンピテンシーの作成や導入する際の注意点

コンピテンシーの作成や導入する際にはいくつかの注意点があります。ここでは、その注意点を具体的に解説していきます。

長期的に運用することが重要

コンピテンシーは作成したからといって、すぐに成果に結びつくというものではありません。そのため、長期的に運用することが重要です。従業員の思考・行動が変わるのに、一定の時間を要するので、根気強く運用していきましょう。

導入までに時間がかかる場合がある

職種・役割ごとに、ハイパフォーマーへのヒアリングを行う必要があるため、コンピテンシーは短期間で導入できるものではないです。導入するまでに一定の期間が必要なことを理解した上で、導入するか検討しましょう。

客観的な評価を行うよう意識する

評価者によって評価にバラツキがあった場合、評価に納得できない従業員も出てきます。コンピテンシー導入の際は客観的な評価を行うよう気をつけましょう。上司の主観的な評価とならないよう、一定の基準を設けて運用することが重要です。

日本企業におけるコンピテンシー評価の導入事例

日本の企業におけるコンピテンシーの導入は、京都産業大学の井村直恵准教授の研究ノート「日本におけるコンピテンシー -モデリングと運用-」にまとめられています。

この資料によると、1995年に「ソニー」が新卒採用、1999年には「アサヒビール」が人材育成・任用、2000年には「ユニ・チャーム」が任用役員候補者の人材育成、「NEC」が評価・任用、「味の素」が評価、2001年には「JTB」が評価を目的としてコンピテンシーを導入しています。

同資料では、次のようなコンピテンシーを活用して組織作りを行った具体的な事例も紹介されています。

<事例:富士ゼロックス>

富士ゼロックスでは、1999 年に管理職以上の社員を対象にした人事制度の改革を行いました。この目的は、職能等級制度を廃止して、役割を基準とする仕組みに変更することでした。

改革では、まず経営戦略や事業戦略に基づいて個々の役割(使命、責任、権限など)が設定され、そしてこの役割につくための任用条件の基準を、コンピテンシーを用いて明確にして、全社員に公開して透明性を図っています。

この基準を明確にすることで適材を配置するとともに、社員にとっては希望のキャリアを実現する上で必要となる知識や能力がわかって、自身の能力開発の目標を立てることができるようになります。

参考:井村直恵「日本におけるコンピテンシー -モデリングと運用-

コンピテンシー評価の導入は評価モデルの設定がポイント

今回の記事では、コンピテンシー評価の導入の方法や評価項目や基準の設定のポイントについて解説しました。コンピテンシー評価には、大きなメリットもありますが、特に自社にあったコンピテンシーの設定が難しいといったデメリットもあります。

しかし、最近では求める人材像を決めるツールとして、新卒採用で活用されたり、自社の人事評価制度の中に、コンピテンシー評価の考え方を取り入れたりする企業が増えてきました。

この記事で紹介したコンピテンシー評価のメリットとデメリットや、導入事例を参考にして、自社の人事制度に取り入れてみてはいかがでしょうか。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部