コンピテンシー評価とは?評価方法やメリット・デメリット、運用方法を解説

「コンピテンシー評価」という評価方法を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

コンピテンシー評価は、社内で優秀な成績や成果を残す社員の行動特性を評価の「ものさし」と定めて、社員の人事評価や採用活動に用いる評価方法です。

社内ロールモデルの行動様式と同じ方向性なのか、という基準の人事評価を行うことで、どのような行動様式が評価されやすいのかが明確になります。さらに人事評価制度の透明性も高まります。

この記事ではコンピテンシー評価のメリット・デメリット、コンピテンシーモデル・コンピテンシー項目の設定方法について説明していきます。

コンピテンシー評価とは

コンピテンシー評価とは理想の行動様式を評価の基準として設定する人事評価です。人事評価だけでなく採用にも利用され、一般事業会社だけでなく、教育機関や研究機関でも用いられています。

評価基準となる項目は、全社的に共通の「共通項目」、職種・職階ごとの「個別項目」に分けられます。そして各項目を数段階の指標で表し評価します。

例えば、営業成績が抜群の社員は下記の行動特性を持っていると考えます。

  • 営業目標と行動目標の設定が理にかなっている
  • 市場や競合他社をよく分析している
  • 目標達成に向けた行動力やコミット力が高い

これらの行動特性を持つ社員は営業職のロールモデルといえるでしょう。

その上、上記に挙げた行動特性を持った社員が社内で多く活躍していると、同じような行動特性を持った人物を採用すれば、採用・定着がうまくいく可能性が高まります。

コンピテンシー評価のメリット・デメリット

25年前にコンピテンシー評価がアメリカから日本に紹介されて、評価方法の1つとして定着しました。メリット・デメリットとして次のような点が挙げられます。

コンピテンシー評価のメリット

コンピテンシー評価は結果・成果だけでなく、そこに至るまでのプロセスを評価します。その結果、公平性・納得感が高くなります。

結果・成果は「~さんの出した結果」というように個人としてみられますが、実際には重要な役割を果たしているサポートしていた社員がいる場合もあります。また、営業成績は担当の市場など、不確定な要素にも左右されます。

しかしコンピテンシー評価は、成果に至るプロセスを評価できるので「本人の貢献度が不透明な」結果・成果に対しても公平に評価できることが特徴です。

さらに社内で「横展開」することで、会社・職種・職階の理想とする行動特性を他の社員にも反映でき人材育成にも有効である、という点がもう1つの特徴です。

評価が今一つであれば、行動特性を意識し行動することで評価が上がります。どの社員にも目標がわかりやすく、またギャップがあれば埋める方法を考えて実行すればよいので、達成感もあります。

このように努力をすれば結果が出るという「甲斐がある」評価制度のもとでは、一人一人が努力して目標達成を目指すようになりやすく、その結果、人が育つ職場を作りやすくなります。

コンピテンシー評価のデメリット

ただしコンピテンシー評価には、いくつかのデメリットがあります。

行動特性という評価基準は、モデル設定・特性の抽出・項目設定の一連の流れにかなりの時間を要します。そのため、少なくとも1年は評価基準を固定し運用しますので、会社の変化が大きい場合に貢献した人を評価しにくいこと、アップデート・メンテナンスが大変なことが指摘されています。

その上、そもそもコンピテンシー項目の設定や「ものさしの作り方」自体の難易度が高く、この点もデメリットの1つです。

コンピテンシー評価と他の評価方法の関係性

そこでコンピテンシー評価のデメリットを補うために、他の人事評価方法と組み合わせることが多くの企業で行われています。

例えば、定量的な評価を行う「KPI」は数値目標(100%)の達成を求める評価方法です。「KPI」は「Key Performance Index」の略称で「重要目標指標」を表します。主に年間目標の設定と、進捗管理の指標・ものさしとして使われます。

予実管理や売上予実管理を行う経理・財務・営業部門は、数字で結果を評価しますので「KPI」は納得性の高いものさしとして使われます。売上、販管費、請求書締め日以内必達達成率など、実例を考えるとわかりやすいでしょう。

また、組織のビジョンとそれに合わせた数値目標を短期的(1~3カ月)に設定して達成度をみる「OKR」をコンピテンシー評価と組み合わせれば、定性的で変化に弱いという弱点を補いながら生産性を上げることができます。

「OKR」は「Objective and Key Result」の略称で、目標と主要な結果を組織のビジョンに合わせ、各部署・個人が設定する数値目標です。短い期間で評価して目標の見直しも行うため、短期的にパフォーマンスを上げながら、目標を達成することに役立ちます。

具体例としては、全部署が経費を5%下げることに3カ月間取り組み、その分をIT投資に回すというOKRによる目標管理は、個人の取り組みや部の達成率をそれぞれ数字のインパクトとして把握できます。

コンピテンシーモデルとコンピテンシー項目の設定

コンピテンシー項目は、企業が求める人材の理想像であるコンピテンシーモデルをもとに設定します。よってコンピテンシーモデルを明確化することが第一の課題です。

コンピテンシーモデルの設定方法とサンプル

コンピテンシーモデルの設定は2つの方法を用います。

1つ目は営業成績が高い社員の行動特性を抽出して、コンピテンシーモデルを作ることです。

しかし、職階によってはロールモデルとなる人物がいないことも考えられます。その場合、理想となる人物像を経営者・管理職から分析して設定することが2つ目の方法です。コンピテンシーモデルの設定は、あくまでも理想を優先させて設定することが前提条件です。

コンピテンシー項目の設定方法 コンピテンシーディクショナリーを参考に

コンピテンシー項目はロールモデルの長所となる行動様式を項目別に整理します。ただし、手元に何の判断材料もなく、理想となるモデルから項目を設定するのは非常に困難です。

そこで実務上は、行動特性を整理して項目別に分けた「コンピテンシーディクショナリー」を使います。コンピテンシーディクショナリーに出ている項目からモデルの持つ行動特性を選んで、リスト化します。

コンピテンシーディクショナリーの内容は、コンピテンシーとして定義できるものをすべて洗い出して定義しています。スペンサーの「コンピテンシー・マネジメントの展開」がもっとも古典的でよく使われています。

最近はもっと手軽にコンピテンシーディクショナリーが使えるように、人事評価ツールに設定されているものが数多く出回っています。紙やデジタルツールで作成してもどちらでも構いません。

コンピテンシー項目 設定手順

コンピテンシーディクショナリーは、次のような6領域と20項目に分けられます。

領域 項目

達成・行動

達成志向、秩序・品質、正確性への関心、イニシアチブ、情報収集

援助・対人支援

対人理解、顧客支援志向

インパクト・対人影響力

インパクト、影響力、組織間隔、関係構築

管理領域

他者育成、指導、チームワークと協力、チームリーダーシップ

知的領域

分析的思考、概念的思考、技術的・専門職的・管理的専門性

個人の効果性

自己管理、自信、柔軟性、組織コミットメント

この表にある項目をそのまま使用しても、ほとんど機能しない場合があります。そこで、評価基準として機能しているのかを実際に検証し、機能した項目を選択しているのかを判断して選び直します。さらに、各項目の定義を実際の仕事内容に合わせて修正する必要があります。

また、全社共通・部門・職階ごとの項目を設定することも必要です。職階ごとの設定は昇進の基準に直結することに留意しましょう。

評価シートの作成と運用

コンピテンシー項目の設定が完了すると、評価シートで運用することがほとんどでしょう。評価ツールのようなシステムにおいても、基本的には評価シートのテンプレートがあります。

評価シートの作成方法とツールを利用した場合のメリット

評価シートは大項目を領域、小項目を行動特性として示し、評価の数値が記入できるように作成します。
例:http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03061_01″

エクセルシートを用いて作成することもありますが、現在は「Smart HR」「カオナビ」「あしたのクラウド」「タレントパレット」クラウドベースの評価ツールも多数あります。クラウドベースのツールを利用するメリットは、集計や偏りなど全体を見ることが可能になり、エクセルシートを整理する手間が省けて、人事部門がより重要なコンピテンシーモデルの作成や、項目設定のアップデートに注力できることです。

上記に挙げたコンピテンシー評価のデメリットを理解することで、本来のコンピテンシー評価のメリットを正しく引き出せます。

採用とコンピテンシー評価

人事評価のコンピテンシー項目は、採用の場面でも基本的にそのまま利用できます。それぞれの項目を測定するための質問を設定し、面接や筆記試験などで活用してください。

採用活動において、コンピテンシー項目を利用する意味は、会社の理想とする人材を採用し、人材への期待と実際のギャップも小さくできることです。また項目の使いまわしにより、人事業務の効率化にも役立つなど、大きなメリットがあります。

まとめ:コンピテンシー評価のススメ ベストプラクティスにぜひ挑戦を

コンピテンシー評価は企業の理想を実現するために極めて有用な方法であり、人事評価だけでなく採用にも利用できるため、有望な人材の獲得から育成まで一貫して効果があります。

ただし、コンピテンシー項目はアップデートが必要であり、また他の評価基準との組み合わせも必要です。しかしデメリットを理解して効果的に運用できると、採用・評価における組織改革の実行につながります。

コンピテンシー評価を使いこなし、ベストプラクティスを目指しましょう。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部